苫小牧工が鵡川に競り勝ち、全道優勝した96年以来23年ぶりの春全道大会進出を決めた。

同点の9回2死二、三塁で、主将の三上謙人捕手(3年)が左翼線2点適時二塁打を放ち、勝ち越し。3季通じてでも14年夏以来、14季ぶりの道大会切符となった。

気持ちですくい上げた。9回2死二、三塁、三上謙は、低めの変化球に手を伸ばし、右膝を地面すれすれになるまで折り曲げ、バットを振り上げた。「死にものぐるい。無心で来た球を振りにいった」。打球は左翼線に転がり、値千金の決勝2点適時打となった。

OBで92年南北海道大会4強を経験している平山良行監督(44)のひらめきが当たった。昨秋から4番を務める三上謙を、この日、初めて1番に変えた。17日の3回戦北海道栄戦まで10打数1安打。初戦のえりも戦で1安打放って以降11打席連続で安打がなかった。気分転換のため役割を変え「調子は悪くない。思い切って振ってチャンスをつくって来い」と送り出すと、3回の2打席目で13打席ぶり安打を放ち、最終回の勝負どころで、大仕事を成し遂げた。

苫小牧工は春夏6度甲子園出場の古豪も、14年秋から昨秋まで13季連続で地区敗退。三上謙を1年春から主力で起用してきた平山監督は「この2年半、試合に出続けて一番悔しい思いを経験している選手」と言う。90年に春夏連続道大会出場しているOB父裕志さん(46)の写真やビデオを見て進路を決めた三上謙は「このユニホームで地区敗退するのが、もどかしかった。やっと全道に行ける」と喜んだ。この日、息子の決勝打を見届けた父は「追い込まれた中、よく打った」と目を細めた。

激戦室蘭地区で北海道栄、鵡川と甲子園経験校を連破。三上謙は「次は全道で自分たちがどこまでやれるか。その経験を夏に生かしたい」と前を向いた。同校が最後に甲子園出場した平成元年(89年)春、当時2年だった父裕志さんはスタンド応援。3年時は春夏と聖地に手が届かなかった。令和元年の春、まずは父も戦った道大会で成長した姿を披露し、夏の夢切符につなげる。【永野高輔】