弘前学院聖愛(青森2位)が明桜(秋田1位)に延長10回サヨナラ勝ちし、創部19年目で初の東北王者に輝いた。

1-4と劣勢の4回途中から登板した鎌田温音(はると)投手(2年)が6回2/3を2安打8奪三振の快投で流れを引き寄せると、7回に山下銀河内野手、三上和(なごむ)内野手(ともに3年)が2者連続本塁打。10回1死一、二塁から桜庭脩永外野手(3年)が左中間へのサヨナラ二塁打を放ち、勝負を決めた。

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閉会式が終わり、恒例の記念撮影が行われようとする時だった。弘前学院聖愛・原田一範監督(41)は斎藤悠輔主将(3年)に声をかけた。

「たまたまうちが勝っただけで両校優勝だから。一緒に撮ろう」。高校野球では珍しいノーサイドの光景だった。「みんな野球が大好き。勝った方が偉いんじゃない」と肩を組んで健闘をたたえあった。

空中分解寸前からたどりついた優勝だった。昨夏は県準優勝も秋季県大会では初戦敗退。1年生からレギュラーの田崎陸内野手(3年)が主将だったが、「よく言えば勝ち気、悪く言えばわがまま」(原田監督)と、個人主義が災いしギスギスしたムードがまん延。ミスや凡打をののしりあうこともあった。同大会後に「一体感」をテーマに斎藤が新主将に任命された。背番号20の控え。「全然リーダーシップはないけど見本となれる子」とひたむきな姿勢がチームをまとめた。

荒療治に田崎にも自覚が芽生えた。3月、「自分が寮に入ったらチームは本気になれるんじゃないでしょうか」と入寮を申し出た。原田監督は「その瞬間このチームはいけると思いました」。寮では下級生とも積極的にコミュニケーションを図り、チームのムードを変えた。サヨナラ打の桜庭も「みんなが作ってくれたチャンスにたまたま打てただけ」と仲間に感謝。決勝戦にもかかわらず応援団の姿はなかった。控え部員は弘前に残り、夏を目指し自らを磨いていた。「野球が好きで来ているんだから、応援ではなく野球をやらせてあげたい」(原田監督)。勝利至上主義に警鐘を鳴らしながら、一体感あふれる戦いで令和初の東北王者に輝いた。【野上伸悟】