初球ストライクを見逃すと、塩尻志学館(長野)・降旗(ふりはた)豪投手(2年)はタイムをかけた。6回の第3打席。下伊那農の捕手の後ろをグルッと回り、右打席から左打席へ移った。本来は両打ちだが、最近は左がメイン。相手は左投手だった。「左投げなので右に立ったのですが、初球を見逃して、やっぱり左の方がいいと思って」。右に立ったのは、この1球だけ。左に立ったが見逃し三振だった。

異彩を放つのは、両打ちだからではない。この日は右翼を守ったが、グラブには指を入れる場所が6カ所。両投げ用だ。小1で父親とキャッチボールを始めた頃から、自然と両投げ両打ちだった。「両方できるんですが、しっくりきたのが左投げ右打ちでした」。その後、一塁に近い方がいいと左打ちに傾いた。それでも「体のバランスがいいし、どちらか故障した時も大丈夫」と両投げは続ける。

書くのと箸は左、歯磨き、サッカー、ドッジボールは右だ。「自分でもよく分からない」と苦笑いする。投手、外野手に加え、一塁手、捕手の経験もある。5打数無安打に終わったが、チームは3年ぶりに3回戦進出。「自分の打撃を修正して、次も勝てるようにしたい」。マルチな働きを誓った。【古川真弥】