金足農(秋田)が4時間2分の死闘の末、涙をのんだ。

吉田輝星2世の1年生4番・山形琉唯(るい)投手が、延長13回233球を1人で投げ抜いた。タイブレークになった13回2死満塁の場面、山形が選択したボールはストレートだった。相手9番打者に230球目を捉えられ、走者一掃の左越え打を許した。「力んで高く浮いてしまった。申し訳なかった」と失投を悔やんだが、沢石和也捕手(3年)から「全然大丈夫」と背中を押され立ち直った。次打者を三飛に打ち取るも、4点は重かった。

山形は吉田輝が1年時に背負った20番を背負う期待の新星。7回に4失点したが、延長でも球威は落ちなかった。10回には2者連続三振を奪うなど、吉田輝さながらのギアを上げる底力を見せ、強烈なインパクトを残した。「初回から走者を出したが低めに投げられた。3年の先輩が後ろに俺たちがいると言ってくれて心強かった」。直球は130キロ前後で打たせて取る投球を心掛けているが、「将来は吉田さんのようになりたい」と憧れを口にする。

野球一家で育った。父洋さんは青森山田の4番として夏の甲子園出場。角館3年の兄凌夏(りょうな)はこの試合に途中出場し、2安打を放った。中泉一豊監督(46)は「継投も考えたが、捕手が球威は大丈夫だと言っていたので続投させた。十分な投球だった。投げさせすぎたのでケアをしてから体力、体作りを重点的にやりたい」と山形をたたえた。中3の昨夏、県大会初戦で完全試合を達成した右腕は、高校初の夏に臨み、吉田さながら1人で投げ抜いて壮絶に散った。悔しさを力に変え、輝く星になる。【山田愛斗】