誉(愛知)の左翼、坂又宗太外野手(3年)は、アルプス席からの「捕れー!」の声に空を見上げた。旗にくくりつけられたボールが落ちてくる。「捕っていいのかな?」。一瞬、迷ったが、グラブを差し出しキャッチ。歓声が起きた。

今大会開幕戦。元中日の井端弘和氏が始球式を務めたが、そのためのボールは主催者のヘリコプターで運ばれてきた。上空から二塁ベース後方に敷いた旗を目がけ、落下。だが、目標からは外れ、左翼の守備位置へ落ちていった。

坂又は「ヘリコプターを見た後、電光掲示板を見てました。そしたら、アルプスからお客さんの声がしました」。旗がついていたため、打球とは落ちる速度が違った。「なかなか、落ちてこなくて。人生で一番難しいフライでした」と打ち明けた。

ナイスキャッチから始まったが、試合ではうまく捕れなかった。0-8で迎えた8回1死二塁、自身と遊撃の間への飛球を「ショートが捕る」と決めつけ、目を切ってしまった。打球は目の前に落ちるポテンヒット(記録は二塁打)。簡単にフライアウトのはずが、1死二、三塁と傷口を広げ、次打者の犠飛でダメ押しの9点目を与えた。

「監督からは『1度、目を切ると次は見えなくなる』と言われていたんですが。次に見た時は、もうボールがどこにあるか分からなかった。申し訳なかったです」と反省した。初めて甲子園でプレーし、「他の球場とは打球の見え方が全然、違いました。曇り空がボールと一体化してました」と明かした。

激戦の愛知大会を勝ち抜き、初出場を果たした。初戦で敗れたが、坂又はスッキリした表情だった。「初めての舞台で負けて悔しいですが、みんなと楽しくプレーできました」と振り返った。【古川真弥】