令和の甲子園は、歴史に残る1発で幕を開けた。第101回全国高校野球選手権大会が6日開幕。八戸学院光星(青森)の下山昂大内野手(3年)が1回表、令和1号となる左越え満塁本塁打を放った。大会50本目となる満塁弾は開幕試合では4度目、1回表では史上2度目の快挙。春夏通じて初出場の誉(愛知)を9-0で圧倒し、令和初の1勝を挙げた。昨夏の100回記念大会は金足農(秋田)の準優勝。この夏も東北勢の勢いは継続だ。

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下山の大きな放物線は、甲子園に令和初の大歓声も生んだ。1回表、2死満塁。内角直球を強振。「満塁ホームランは初めて。令和1号は記念になる。人生の中で一番うれしい。風と仲間の気持ちが押してくれた」。初球は、左投手特有の角度ある直球をのけぞるように見逃してしまった。「次も同じのがくるな」。読み通りだった2球目を会心の一撃。一塁ベースを回ると右拳を思い切り突き上げ、メモリアル弾を喜んだ。

昨夏の「カナノウ旋風」を導いた吉田輝星投手(現日本ハム)が大阪桐蔭との決勝で敗れた“次”の一戦。勝利を呼ぶ? 使者も舞い降りた。昨夏の2回戦では、金足農・菊地彪吾外野手(現八戸学院大1年)の背中にセミが止まったまま適時三塁打を放って話題となった。その後も吉田輝が大嫌いなセミを、仲間が背中に付けるなどしてエースを癒やした幸運“アイテム”だ。

この日の八戸学院光星も、開会式前に、いじられ役でムードメーカーでもある下山の背中に仲間がセミを止まらせていた。試合前の散水中にも、ベンチ前に登場。「青森には、ほとんどセミはいないんだよね。いても、かわいらしく鳴くやつ」と笑う仲井宗基監督(49)も大阪入り後、セミを捕まえては選手や女子マネジャーの背中に向けて飛行を誘導。“セミュニケーション”で緊張を和らげてきた。9回にはベンチ上から再度セミが出現し、勝利を確信した。

今大会49代表校中最多となる青森大会15本塁打の強力打線。声量チームNO・1の下山は「自分たちも青森や東北の方々に勇気や元気、感動を与えられるプレーをしたい」と意気込んだ。吉田輝星が盛り上げた平成最後の夏。令和最初の夏は「KOSEI」が悲願の東北初優勝に挑む。【鎌田直秀】