敦賀気比(福井)の杉田翔太郎内野手(3年)が、夏の甲子園では史上6人目のサイクル安打を達成した。 3番一塁でスタメン出場した杉田は右安、左二塁打、中安、右三塁打、左飛で迎えた第6打席で右中間に本塁打を放った。試合前には「自分がチームで一番緊張するタイプ。最初の打席でなんとか波に乗りたい」と話していたが、その初回の安打が大記録につながった。 サイクル安打達成は04年に駒大苫小牧(南北海道)の林裕也選手が横浜(神奈川)戦で記録して以来、15年ぶり。

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“北陸のサイクル男・杉田”が誕生した。右前打、二塁打、中前打、三塁打を放って迎えた9回の第6打席。4球目、高めに浮いたスライダーをしばき上げた。「上がりすぎてアウトになるかと思った。風のおかげです。素直にうれしかった」。右翼席に着弾すると思い切りガッツポーズ。15年のセンバツで甲子園史上初の2打席連続満塁弾を放ち、「満弾男」と呼ばれたOBの松本哲弊(現同大)に引けを取らない、文句なしのヒーローになった。

最後に残った本塁打は、実は十八番だった。4月3日の練習試合で代打アーチを放つと、続く打席も本塁打。翌日の練習試合でも1発を決め、この3本でレギュラーをつかんだ。「チームで一番緊張しい」という言葉はどこへいったかという、3万人の大観衆の前での離れ業をやってのけた。

明るい性格で周囲を笑わせるのも得意技だ。ともに中軸を担い、寮で同部屋の4番木下元秀外野手(3年)とは名コンビ。お笑い芸人「笑い飯」のようなボケと突っ込みの掛け合いが得意で、そのギャグセンスに周囲からは「お笑い芸人の方が向いているんちゃうか」と勧められるほど。木下は「勉強も一緒にする。あいつに教えてもらっているけど、ウソを教えてきたりします」といたずらっ子な素顔を明かした。

前回のサイクル安打達成は15年前。当時3歳の杉田の記憶にあるはずもなく、令和初の偉業に「まさか自分がするなんて…」と目を丸くした。5安打7打点で22安打19得点の大勝をけん引したが、昨夏の甲子園は応援要員。木更津総合(千葉)に1-10で大敗した試合をスタンドから見届けた。「先輩たちの借りを返す甲子園で全国制覇が目標。先のことを見ずに初心に戻って戦いたい」。北陸のサイクル男は、まだまだ暴れ足りない。【望月千草】

◆杉田翔太郎(すぎた・しょうたろう)2001年(平13)6月5日、東大阪市生まれ。小5から野球を始め、八尾ファイターズ、八尾フレンドでプレー。敦賀気比では2年秋からベンチ入り。174センチ、74キロ、左投げ左打ち。