能代松陽が7回コールド8-1で花輪を圧倒し、12年連続の県大会出場を決めた。

3回裏に相手失策や「2番二塁」田中稜真内野手(2年)のスクイズで2点を挙げると、5回には「4番一塁」山田柊斗内野手(2年)の右前2点適時打で加点。大技、小技で打線をつなぎ、工藤明監督(43)から勧告されていた「負けたら2年生引退」をはねのけた。

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新チーム結成から約2カ月。能代松陽ナインそれぞれが役割をまっとうし、意地を示した。1日の今大会初戦、大館鳳鳴に3-5。緩慢なプレーで序盤に5失点すると、攻撃陣もミスを重ねて12残塁。翌日2日のミーティングで、工藤監督のカミナリが落ちた。3回裏1死三塁で投手交代後の初球を決めたスクイズに加え、バント安打2本の田中は「監督に『負けたら引退、代替わり』と言われていたので、それくらいの強い気持ちでやらないといけないことが分かった」。7回の先頭でも四球で出塁し、二塁盗塁。「最近は『打てる2番』とか言われるので打ちたいのは事実。でも自分が出来ることは点を取るためにつなぐこと。今日は良かったと思うが、まだまだこれから」と気を引き締め直した。

180センチ、98キロの「能代のドカベン」山田も、持ち味の強打を披露した。4回には左前に運び、5回には右前2点適時打と主軸の存在感は絶大。今夏の秋田大会では3球三振も経験した悔しさから、打撃練習リーダーに立候補。練習法や相手投手研究でも責任を背負った。「今の打力では足りない。(県大会まで)あと1週間あるので、みんなが自分から変わろうとしなくては」と、さらなるレベル向上を誓った。

5日の大館国際戦では山田が本塁打を放つなど延長で接戦を制した。この日は、投手陣も3人の継投で2安打1失点。高校野球生活終了の危機から脱し、精神的な強さは増した。17年秋には東北大会4強も準決勝で敗れてセンバツ切符を逃し、11年夏から甲子園に遠ざかっている。田中は「県大会でどこと当たっても勝って、東北大会に出ることが最低目標」。崖っぷちからはい上がり、まずは東北一の長い秋をつかむ。【鎌田直秀】