仙台育英(宮城)が智弁和歌山を撃破し、大阪桐蔭と両校優勝を果たした12年以来の4強入りを決めた。

プロや大学進学などの将来を見据えた両監督の意向により、3年生限定で木製バットを使用した一戦。2-2に追いついた7回表に中里光貴内野手(3年)の中前適時打で勝ち越すと、9回には入江大樹内野手(2年)が金属バットで左中間最深部に2点本塁打を放った。1日の準決勝では関東第一(東京)と対戦する。

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未来にもつながる大きな1勝だった。大学進学予定の「1番二塁」中里が7回表2死二塁、木の乾いた音を響かせた。体勢を崩しながらも、しぶとく中前適時打で勝ち越し。「国体で3年生の全力野球は終わりですし、木製バット使用で次のステージへ向けたモチベーションも上がりました。あと2試合やりたいです」。前日の自打球で負傷し、痛み止めを飲みながらの満身創痍(そうい)の状態だが、充実感に満ちていた。

守備でも成長曲線を感じさせた。昨秋に外野手から二塁手に転向。「自分の守備力が弱点でもあった。まだまだ満足していないが形にはなってきたものは出せた」。7回裏には一、二塁間の当たりを好捕し、二塁送球。併殺を完成させて、チームの勢いを加速させた。二塁塁上では、プロ志望届を提出した智弁和歌山の黒川史陽遊撃手(3年)らとも試合中に会話。「守備はどんな練習しているの? って聞いちゃいました」。1歩目の大事さに加え、ノックでは打球を待たずに常に前に詰める姿勢の徹底を助言された。仙台育英グラウンドは人工芝のため、待って取る意識になっていた考え方も変化。「次への参考になりました」と収穫も得た。

準決勝で対戦する関東第一には、秀光中(宮城)時代の全国大会準決勝で敗れた上一色中のメンバーが名を連ねている。「練習試合でも、全中でも負けているのでリベンジしたいです」。育英のリードオフマンが秋の頂点を攻守で導く。【鎌田直秀】