秋季東北地区高校野球大会は今日11日、岩手県(県営野球場、花巻球場)で開幕する。

創部59年目で春秋通じ東北大会初出場の仙台城南(宮城3位)は、県第3代表決定戦の死球で眼窩(がんか)底骨折、鼻骨骨折の重傷を負った石川友希捕手(2年)が復帰。14日の初戦で今夏の甲子園出場校、花巻東(岩手2位)に挑む。また夏の甲子園16強の鶴岡東(山形1位)は、強力打線を武器に79年以来のセンバツ出場を狙う。大会は台風の影響で12、13日の試合が中止となり、14日以降の順延が決定。準決勝は17日、決勝は18日に行われる。

初陣の仙台城南に頼もしい男が帰ってきた。花巻球場で行われた開幕前日の公式練習で、背番号2の石川がハツラツとしたプレーを披露。「痛みは全然ないです。もう大丈夫です」と大けがからの復活を笑顔でアピールした。

9月22日、古川工との第3代表決定戦の9回、左目と鼻の間に死球を受け、病院に搬送された。角晃司監督(59)は血だらけでうなり声をあげる石川に「東北大会は無理だなと思った」。場所がずれていたら失明の危機すらあり、石川も「当たった瞬間はマネジャーになることを覚悟した」とあきらめかけたが、夢の甲子園につながる舞台を前に思い直した。「こんなチャンスを逃したくない」。2日後に手術を行い、3日間入院。全治1カ月の診断にもあきらめなかった。実戦復帰は5日。打席では恐怖感から腰が引けたが、「負けないように踏み込んでいこうと思っている」と覚悟を決めた。

東北工大高時代を含め、創部59年目でたどりついた東北大会。角監督は「ありがとう。城南の歴史を変えてくれた」と選手たちに感謝した。常々「グラウンド外の行動も大切にして、野球の神様からごほうびをもらおう」と言い続けてきただけに、石川の出場直訴を認めるしかなかった。「驚異的な回復力。でも出していいのかという迷いはある。ただ石川がいなければ試合にならないのも事実。私が全責任を負って使います」と心中覚悟だ。石川は「花巻東は有名な人がいっぱいいて強いけど、気持ちで負けずに強気のリードで押していきたい」と横綱相手に真っ向勝負を挑む。【野上伸悟】