仙台育英(宮城1位)と鶴岡東(山形1位)がともにコールド勝ちで決勝進出を決め、来春のセンバツ出場を確実なものにした。仙台育英は2年生左腕・向坂(むかいざか)優太郎が8回3安打13奪三振の力投で、17歳の誕生日を飾った。今夏の甲子園では仙台育英が8強、鶴岡東が16強と、強さを保っての夏春連続だ。明治神宮大会出場をかけた決勝戦は18日に行われる。

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2年生の意地が夏春連続の甲子園を引き寄せた。仙台育英の背番号8向坂は、この日のマウンドを任せられた『意味』を理解して投げ続けた。8回裏2死一塁、初回に先制2ランを浴びた塚本悠樹捕手(2年)を空振り三振に仕留めると、軽く左手を上げ控えめに喜んだ。大一番で高校初完投。「後ろにいい投手がいるんで、行けるところまで行こうと投げた」と笑顔を見せた。

夏の甲子園ではベンチ外だった。スーパー1年生と騒がれた笹倉世凪、伊藤樹らが甲子園で躍動する中、仙台に居残りBチームで技術練習に終始。「悔しかったけど、2人は自分よりすごい投手。技術面では圧倒的に上。いろいろ吸収して自分も成長したい。そして自分が成長することで、彼らにとってもいい存在でありたい」と謙虚に鍛錬を続けた。最速はこの日計測した141キロだが、スライダー、カーブ、チェンジアップ、スプリットを丁寧に投げ分ける。「変化球をストライクゾーンで投げ分けることには自信がある」とひたすら武器を磨いた。

甲子園では準々決勝で星稜(石川)に1-17と大敗した。新チーム結成時に選手が掲げた目標は「4大大会(春夏甲子園、明治神宮大会、国体)優勝」。須江航監督(36)は「いつまでも笹倉と伊藤樹に頼っているようでは、日本一なんて夢のまた夢。向坂というピッチャーが背番号1になることが、この学年で日本一になるためのポイント」と向坂をチーム底上げの象徴にし、大会1週間前にこの日の先発を言い渡していた。須江監督は「見事に期待に応えてくれた。本当にうれしい」とほめたたえた。

宮城臨空シニア時代は県初戦敗退レベル。それでも15年夏の甲子園で準優勝したロッテ平沢らのプレーに感動し入学した。決勝の相手は甲子園16強の鶴岡東。センバツ当確で浮かれているわけにはいかない。まずは神宮大会に出場し1冠への挑戦権を得るためにも負けられない。「疲れはあるけど決勝も勝利に貢献したい」。成長を遂げた新エース候補は頼もしく言い切った。【野上伸悟】