中日根尾らで18年春夏甲子園を連覇した大阪桐蔭が、来春センバツで2年ぶりに聖地へ帰ってくる。秋季近畿大会準優勝で出場はほぼ確実。西谷浩一監督（50）は「勝てるチーム」と再び頂点を目指し部員43人を競わせている。今回はプロも注目する西野力矢内野手（2年）ら強打のクリーンアップトリオに迫った。【取材・構成＝石橋隆雄】
◇ ◇ ◇
今の大阪桐蔭ナインは誰もまだ「TOIN」のユニホームを着て、甲子園でプレーしたことはない。西野たちが1年の時は春夏連覇し、2年生の今年は11年以来8年ぶりに春夏とも甲子園出場なし。その悔しさをぶつけた新チームは近畿大会で準優勝だった。準々決勝では今夏甲子園4強の明石商（兵庫）を破った。
明石商戦で「3番三塁」の西野は来秋ドラフト1位候補の最速151キロ右腕、中森俊介投手（2年）から逆方向の右翼席へ同点3ランをたたき込んだ。2球外角のボール球を見送った後、3球目の高め直球にうまくバットのヘッドをぶつけた。「普段は左翼への本塁打が多い。あの時はたまたま体の軸が残ってうまく飛んでいった。前に体重が乗ってしまって何でも振りにいってしまうので、あの時の打撃を目指しています」。自らを大きく成長させる1発となった。
愛称は「ゴンちゃん」。NHK子ども向け人気工作番組「できるかな」に登場する「ゴン太くん」に似ているから。西谷監督も「なかなかいないキャラでしょう。ボーッとしている」と愛情たっぷりに笑う。そんな見た目の「ゴンちゃん」の身体能力はチーム内だけでなく、学校でも群を抜く。体育の時間にサッカーをすれば高速ドリブルで突破、バレーボールでは強烈なアタックを連発する。
根尾、ロッテ藤原らが100回大会の夏を制覇した時、西野はボールボーイとして甲子園のグラウンドにいた。「やっぱり自分もあそこに立ってプレーしたい」と思い続け、ようやく初舞台が見えてきた。高校通算は24本。現在はオープンスタンスや左足の上げ方をいろいろ試し、より広角に確実に打てるようにバットを振り続けている。
近畿大会で4番を打った仲三河優太外野手（2年）は左のスラッガーだ。中学時代は小山ボーイズで投手として春、夏全国準優勝。ジャイアンツカップも準優勝で、U15日本代表に選ばれた。1年の6月に練習試合で登板するなど投手での期待も大きかったが、今は打撃で引っ張っている。昨冬の筋力トレーニングで体重は10キロ増。「飛距離が出るようになった。積極的に打った方が結果が出ている」。打席での積極さも持ち味だ。高校通算は10本ながら履正社との秋の大阪大会決勝では3ランを放っている。
さらに5番にも高校通算22本を誇る右の船曳烈士内野手（2年）が待ちかまえる。172センチと西野、仲三河よりは小柄だがOBの日本ハム中田を参考に「前に大きく振って遠くに飛ばす意識」で飛距離アップに取り組む。1年秋から4番を任されるなど経験も十分だ。西谷監督が「甲子園に対して飢えている」と評する新チーム。3人を中心とした新打線は根尾、藤原らにも負けない破壊力を持っている。
大阪桐蔭新チームの西谷浩一監督寸評
◆投手 藤江星河（2年）最速141キロのエース左腕。「リズム、テンポ、制球のよさでうまく投げる」
◆捕手 清水大晟（2年）近畿大会は背番号12で正捕手。「インサイドワークがいい。1年から捕手で経験」
◆一塁 前田健伸（1年）近畿大会でも本塁打。「柔らかい打撃で伸び盛りのロングヒッター」
◆二塁 加藤巧也（2年）一塁、三塁、外野も守る。「前のチームから起用してきた。足も使える」
◆三塁 西野力矢（2年）長打力にはプロも注目。「右方向にもっと打てるようになれば幅が広がる」
◆遊撃 伊東光亮（2年） 守りの要。「スローイングがいい。守りを考えるとなかなか外せない」
◆左翼 船曳烈士（2年）一塁と外野を守る長距離砲。「1年秋から4番を打った経験が大きい」
◆中堅 池田陵真（1年）切り込み隊長。「体が強い。負けん気も強く1番打者に向いている」
◆右翼 仲三河優太（2年）左の主砲。「巨人丸選手のような打ち方で長打力もある。強肩も武器」
※メンバーは秋季近畿大会決勝時
◆船曳烈士（ふなびき・れつし）2002年（平14）10月5日、兵庫・たつの市生まれ。揖西西（いっさいにし）小2年から3年まで軟式の龍野ヤンチャーズ。小4からニッケレッドシープス（現東加古川レッドアローズ）で硬式に。龍野西中では佐用スターズに所属。大阪桐蔭では1年秋からベンチ入り。172センチ、80キロ。右投げ右打ち。
◆仲三河優太（なかみがわ・ゆうた）2002年（平14）10月22日、栃木市生まれ。大平東小2年から大平東クラブ（軟式）で野球を始める。大平中では小山ボーイズで投手として春、夏全国準優勝。大阪桐蔭でも1年生から6月の招待試合などで登板した。現在は野手優先。180センチ、90キロ。右投げ左打ち。
◆西野力矢（にしの・りきや）2002年（平14）9月11日、和歌山・紀の川市生まれ。3歳から兄について行き野球を始める。粉河小では大阪泉州ボーイズ、粉河中では南大阪ベースボールクラブでプレー。中学時代は通算35本塁打。大阪桐蔭では1年秋からベンチ入り。180センチ、95キロ。右投げ右打ち。
