昨年の第91回選抜高校野球大会の準優勝校、習志野(千葉)が6日、千葉・習志野市内の同校でセンバツ準優勝旗の返還式を行った。

例年はセンバツ開会式で返還されていたが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大で史上初の中止となり、大会主催者が学校を訪れ、異例の返還式となった。角田勇斗主将(3年)は関係者に見守られながら、堂々と準優勝旗を返還した。

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大会出場はかなわなかったが、準優勝旗を手に、甲子園の大観衆の前で行進するはずだった。開会式予定日から18日。角田はわずか10人の大会関係者と監督、部長、そして数人のマスコミの前で、静かに準優勝旗を返還した。

観客も、野球部員もいない。“美爆音”で全国にその名をとどろかせたブラスバンド部の後押しもない。シンと静まりかえった応接室。「準優勝旗返還」。司会者の声に「はい!」と角田の元気な声が響き渡った。背筋をピンと伸ばし、準優勝旗をギュッと強く握りしめる。「数々の学校が受け取ってきた準優勝旗。とても重たく、貴重なものだと感じました」。その手に、センバツの歴史を感じながら、主催者として訪れた毎日新聞社・広田勝己取締役に返還した。

コロナ禍で先行き不透明な日が続く。小林徹監督(57)は「社会状況が1日も早く改善し、子どもたちが精いっぱい、泥だらけになりながら、練習ができる日が1日でも早く来ることを願ってやみません」と、今後の事態回復を願った。

センバツ準優勝から1年。今のこの状況は、誰も想像できなかった。今春の千葉大会も中止となり、全体練習がほとんどできない状態。角田は「今は個人で練習をするしかありませんが、夏の大会の目標を見失うことなく、甲子園を目指して頑張っていきたいです」と前を向いた。先輩たちの偉業を胸に、新たな歴史をつくり出す。夏へ-。前を見つめて進む。【保坂淑子】