甲子園は未経験でも、プロ注目の逸材は少なくない。最後の夏を信じ、将来の夢を描く選手を紹介する。

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安中総合学園(群馬)に隠れた右腕がいる。清水惇投手(3年)はU15日本代表に選出された経歴を持つ。4つの甲子園常連校からスカウトされたが、地元の県立校を選んだ。理由は同校で野球部主将を務めていた2学年上の兄だった。「野球する姿をいつも見ていた。この学校なら楽しくできるなと思った」と笑う。

毎日10キロの道のりを自転車通学。専用グラウンドはなく、他の部と共有のため、日によって使えるスペースは変わる。恵まれているとはいえない環境でコツコツと練習に励む。昨秋の県大会3回戦では桐生第一に1-8で敗れたが、敗因は明らかだ。「去年夏から秋にかけてフォームを変えたが、うまく調整できなかった」。その後フォームを固めることに成功。大会後からオフ期間までの練習試合で70イニングを投げて自責点は1のみ。強豪・霞ケ浦(茨城)戦では2安打完封。内角を果敢に突き、外角のスライダーで打者を仕留める。度胸と球のキレに自信を持っている。一冬を越え、さらに手応えを口にする。昨季までの最速は142キロも「ブルペンでの感覚的にはもっと出てる。早く試合で投げたい」と意気込んだ。

群馬は高崎健康福祉大高崎、桐生第一、前橋育英と私学3強。「打倒私学は入学する時から決めていた。結果を残したいです」。無名校の右腕が波乱を巻き起こすかもしれない。【湯本勝大】