センバツ、春季大会に続き、夏の甲子園も中止となり、球児の受け入れ先である大学野球部は対応を迫られている。スポーツ推薦の基準見直しを検討する大学が出ている。

東京6大学の名門・明大の場合、スポーツ特別入試の競技成績基準は(1)全国大会出場か(2)関東、近畿など地区大会ベスト4以上。高2までにクリアできなかった高校生を考慮し、これまでの成績や実力が基準相当なら、(1)、(2)の成績を収めていなくても選抜できるようにすることを検討している。合格者の競技レベルは下げずに、獲得する方法を探っている。

関西のある強豪大も似た対応を取る。全国大会出場や近畿大会8強などを選考基準とするが、本年度はなくす。もっとも、野球部関係者は「2年秋の段階で欲しい高校生には声をかけているので、大きな影響はない。監督同士の長年の人間関係で決まることが多い」と明かした。ただし、大会中止で実戦を見られていない分、8月に予定するセレクションでは例年よりも実技を重視したいという。

現場への影響に、明大・田中監督は「幸い、うちを志望してくれる高校生は1年夏から甲子園に出ている人がいる。2年までの時点で既に資格ありの子を、まず追いかけている」と話す。近大・田中監督も「来年の新入生は昨年からお願いしているので、甲子園がなくても支障はない」。伝統やブランド力があり、志望する高校生も多い大学では、それほど影響は出ていないようだ。ただし、これは来年度の新入生の場合。再来年度は、新たな対応が必要になるかも知れない。

地方の大学は、どうか。全日本大学選手権の常連である大学の監督は「動けない」と漏らす。「自分の目で見て、これは、という選手が、たまにいる。それができない」と高校の活動休止が長引き、スカウティングに影響が出ていると認めた。「まずは情報収集。緊急事態が明けたら一気に高校に連絡したい」と備えている。

送り出す側の声も聞いた。都内の強豪私立高校は、現時点でスポーツ推薦で進学が内定した3年生は1人だけ。ただ、昨年同時期も1人。例年、大学の春季リーグ戦が終わる6月以降に動きが活発化するという。これからだ。ところが、今年は大学リーグも延期や中止が相次ぎ、先が読めない。同校監督は「春季大会がなくなり、大学のスカウトからの照会がなくなった。厳しくなりそうな雰囲気はある」と不安を口にした。【アマチュア野球取材班】