ホームを聖地カラーにした。向上(神奈川)は21日、伊勢原市内の新グラウンドの竣工(しゅんこう)式を迎えた。両翼95メートル、中堅120メートルで、ナイター照明6基付き。併設のブルペンは5人が同時に投げられる。県内有数の設備となった。10年以上の計画を経て、18年秋に着工。野球部の活動以外にも用いられるが、直理賀一校長(51)は「念願のグラウンドであります。やっと野球部が、ベスト8以上の学校としては、それなりのものが整ったと思います。やっとですね」と感無量の様子で話した。

こだわりのポイントは、人工芝やベンチの配色だ。濃いブルーのベンチから広がる濃淡2色のグリーンやアンツーカー周りは、横浜スタジアムそっくり。平田隆康監督(45)の要望に応えた。全国屈指の激戦区、神奈川。夏は一部1回戦でも同球場が使われるが、通常は5回戦ないし準々決勝以降で用いられる。決勝の舞台も同球場だ。日ごろの練習から“ハマスタ・カラー”に慣れさせる狙いがある。

平田監督は「この色使いを見せておくことで有利に働く。(横浜スタジアムでプレーする)そういうイメージを持ちたいと意識しました。甲子園をイメージすれば土ですが、メンテナンスを考えたら人工芝。だったら、スタジアムに近いものにしたかった」と、悲願の甲子園出場への追い風にしたい考えだ。

もっとも、今は目の前のことに最大限、注力している。チームは23日から個人練習という形で、新グラウンドで3カ月ぶりに活動を再開する。学校内にあるグラウンドはスペースが限られるため、フリー打撃などは行えず、近隣の球場を借りながらの活動が当たり前だった。ようやく自前で広々と練習できるが、勝ち上がった先に甲子園はない。それでも、平田監督は「まずは3年生と野球がやりたい。この3カ月、全くできなかったので。3年生が、ここで練習している姿を早く見たいですね」と表情を緩めた。

中止された選手権大会に代わり、神奈川県高野連は8月に独自大会を開く。詳細は未定だが、今の3年生とは最後の真剣勝負の場となる。3年生中心で臨むつもりだが、「勝ちにこだわりたい」。高校野球の集大成の機会を用意するつもりだ。そのためにも、今は新グラウンドでチーム全体で活動再開できる日が待ち遠しい。【古川真弥】