「2020年甲子園高校野球交流試合」が8月10日、阪神甲子園球場で開幕する。地元兵庫の芦屋高校書道部は、19年度の国際高校生選抜書展(書の甲子園)団体の部で2年連続近畿地区優勝。センバツのプラカードの文字を書き上げていたが、披露される場がなくなった。青春を書道にささげた部員がこのほど、夢舞台に立つ球児への熱い思いを1枚の書にしたためた。

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春。センバツ中止の一報に、やり場のない悔しさがこみ上げた。芦屋書道部は、すでにプラカードの文字を完成させていた。全国11校が大役を担い、芦屋の担当は履正社、大阪桐蔭、明石商。部内選考を経て、履正社を書いた石田瞳さん(3年)は「自分の字が甲子園の土の上を通るのが、楽しみでした」と悲しんだ。

夏。甲子園交流試合の開催を、わが事のように喜んだ。部員20人は黒板いっぱいに球児への思いを書き出し、全員で言葉を選んだ。

「再生の夏」

1度は止まった時間が動く様子を、力強く書いた。

「一球に青春のすべてを」

勝っても負けても、1度だけの夢舞台。大阪桐蔭を担当した原愛実さん(3年)は「もらったチャンスを大切に、練習してきた全てを出し、楽しい夏にしてください」と願いを込めた。

球児へのエール制作日。そこには今春卒業した、明石商担当の大野詩織さんもいた。たくましくなった後輩たちをそっと見守った。

部員にとって「書道」とは-。石田さんは言った。

「人生にとって、欠かせないものになりました。こんなに大切なものになるとは、高校で書道部に入るまで思っていなかったです」

大好きな書道で、その思いを表現した。【松本航】

○…芦屋書道部は5月31日にオンラインミーティングを行い、3年生の今後は個々の意思を尊重することになった。大舞台の1つだった7月の「書道パフォーマンス甲子園」は中止。新型コロナウイルスによる休校最終日が、代替わりの節目となった。最近、受験勉強に力を入れていた原さんは、誘いを受けて今回の企画に参加。炎天下の中で筆に思いを込め「本当に楽しくて、書道が好きだと再確認しました」と笑った。

◆芦屋書道部 2014年(平26)に約40年ぶりの復活。顧問の狩谷申子さんの指導を受け、18年度から国際高校生選抜書展(書の甲子園)団体の部で2年連続の近畿地区優勝。今春センバツのプラカードの文字は、同書展で地区優勝した全国11校(近畿は滋賀・甲西と芦屋の2校が優勝)が担当予定だった。9月に作品受付がある本年度は3年連続の近畿地区優勝、初の全国優勝を目指す。学校は1940年(昭15)に芦屋中として設立した公立校。