夏の高校野球が終わった。各地の代替大会。優勝し喜ぶ球児の姿は、いつもの光景にも見えた。だが、その先に甲子園はない。だからなのか、勝って涙を流す球児が少なくなかったように思う。喜びと同時に湧き起こる感情があったのか。悔しさ? 怒り? ピンと張った糸が緩んだ瞬間、何かがあふれ出していた。

5月に選手権大会中止が決まり、多くの大人が球児にメッセージを送った。君たちの努力は間違っていない。いつか報われる。糧にしてほしい。人生の先輩として、高校生に寄り添う善意は尊かった。ただ、こうも思う。どれだけ球児の心に届いたか。当事者でない大人より、集大成の場を奪われた球児自身の声を聞きたい。「球児からの手紙」を企画した理由だ。

大会前に「将来の夢」「20歳の自分へ」「感謝」といったテーマを例示した。自由に書いてもらった場合もある。内容が似通うのではという不安は杞憂(きゆう)だった。直筆に、それぞれの思いを込めてくれた。協力いただいた皆さん、ありがとうございました。【古川真弥】