花巻農が久慈に競り勝った。チームが誇る「バント職人」瀬川龍太捕手(2年)が7回、値千金の決勝スクイズ。守備では165センチのエース左腕・藤原奏良(2年)を好リードし、4失点完投勝利に導いた。

主将の瀬川が1球に食らいついた。4-4の7回1死一、三塁、カウント1ボールからの2球目だ。「打撃よりもバントの方が得意。スクイズのサイン出ないかな」。そんな思惑が佐々木貴大監督(31)に届いたのか、願っていたスクイズのサイン。「いざサインが出ると、緊張で手が震えた(笑い)」。しかも相手投手のスライダーがベース付近でワンバウンド。体勢を崩されながらも、そこはバント職人。バットを地面につけながら、執念で投前に転がした。スタートを切っていた三塁走者が逆転の生還。瀬川は「死に物狂いで当てました。勝てて良かった」とホッとした笑みを浮かべた。

マスクをかぶると「いたずら好きな背番号1」のエースをリードで引っ張った。前半は直球主体で打者の反応を見ながら、後半は変化球中心に組み立てた。11安打を浴びながら粘り、「学校生活では(藤原奏に)いたずらされることが多い。でも、かわいいから怒れない(笑い)。マウンド上では頼りになる投手です」。中学からバッテリーを組む息のあった呼吸で、「ハナノウ旋風」を巻き起こす。【佐藤究】