新潟明訓が、今夏の覇者・中越に5-4で逆転サヨナラ勝ちした。3点を追う9回。3連打などで3-4とし、なお2死二、三塁で5番・種崎樹左翼手(2年)が値千金の中前2点サヨナラ打を放った。東京学館新潟は新発田中央に2-1の接戦を制した。日本文理は加茂暁星に0-4で負けた。準決勝は21日に三条パール金属スタジアムで行われる。

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打球に執念が乗り移った。種崎の放った強烈なゴロはとびついた中越・吉井愛斗遊撃手(2年)の右を抜いてセンターに転がっていった。1-4で迎えた9回は3連打などで2点を返して、まだチャンスは続いた。2死二、三塁。5番打者の打順が巡ってきた。「あの状態で負けるのはイヤだった。みんなの気持ちを背負った」。カウント1-1からの低めのスライダーを思い切りはじき返した。

二塁走者の阿部瞬之介遊撃手(2年)が両足でジャンプしながら5点目の本塁を踏むと、ホーム付近に優勝したような歓喜の塊ができた。「みんながつないでくれた。何としても1本と、気持ちで打った」と9回、7人目の打者になった種崎は言った。島田修監督(55)は準々決勝前日の18日に、種崎の活躍を全員の前で「予言」していた。

練習後に開かれたミーティングだった。中越との試合に向けてナインにこう話し掛けた。「苦しいゲームは苦しんできた者が活躍する」と種崎の名前をあえて挙げた。「走者として塁に出てもサインを見落とすなど、判断力が鈍っていた」と4回戦までを振り返る種崎は絶好の場面で島田監督の言葉を証明してみせた。

新潟明訓の今秋のテーマは「勝つより、強くなろう」。種崎の逆転サヨナラ打は強さを表現しながら、勝利も引き寄せた。「チャレンジャーとして、チームのために四球でもいいから塁に出たい」。準決勝進出を決めた殊勲者は謙虚に話していた。【涌井幹雄】