19年夏の第101回全国高校野球選手権大会で初優勝した履正社(大阪)の優勝旗返還式が19日、甲子園球場で行われた。

本来なら8月10日に中止となった今夏の102回大会の開会式で行われるはずだった。すっかり秋の空になった球場に涼しい風が吹く中、少し髪が伸びたナイン20人が堂々と行進した。市尼崎のブラスバンド部はバックスクリーンの真下からファンファーレを鳴らし、三塁側ベンチ前で行進曲を生演奏。君が代、大会歌「栄冠は君に輝く」の合唱など、例年の開会式さながらに再現された。この夏の大会中止で野球部員と同じく悔しい思いをした高校生たちが、甲子園でその思いをぶつけた。今回は梅花(大阪)のチアリーディング部45人も参加して花を添えた。

履正社の20人はこの夏の甲子園交流試合でベンチ入りしたメンバーで、主将の関本勇輔捕手(3年)があいさつした。「今年は世界的な感染症問題で全国の高校生の大会や行事が中止になりました。私たちは答えのない状況に苦しみ、目標を失ったこの気持ちをどこにぶつければよいのかとたくさん悩みました。その時、支えになってくれたのが、先生方や家族、そしてともに目標に向けて頑張ってきたチームメートでした」と、すべての高校生の思いを込めた。「優勝旗を甲子園で返すことができ、とてもうれしいです。この状況が少しでもよくなり、全国の高校生の大会が開催されることを願っています」と締めくくった。

見守った岡田龍生監督(59)は「よかった。見直しました。あんなにしゃべれるとは。僕じゃ無理だなと」とほめた。関本は「100回は練習しました」と猛練習したことを明かした。「(スタンドからの)拍手で背中を押してくれました」と、一般公募で無料招待されたファン620人の拍手にも感謝した。

ファンはバックネット裏の席に間隔を空けて着席した。イベント自体はわずか35分だったが、来年の春と夏に観客を入れて開催した場合に向けて大事なテストケースとなった。渡辺雅隆大会会長(61)は「コロナの終息は見通せませんが、103回大会を何としても開催すべく精いっぱい努力をしていきます」とファンの前で来夏の開催への思いをハッキリと口にした。【石橋隆雄】