古豪・福島商が8-7で学法石川に競り勝ち、21年ぶり14度目の秋決勝進出で、2年ぶり20度目の東北大会出場を決めた。6回まで6点リードも反撃を許し、最終回には1点差まで迫られた。さらに先発した浅倉優樹投手(2年)が足をつって緊急降板するピンチで、遊撃からマウンドに上がった田中冴輝主将(3年)が後続を断った。東日本国際大昌平は7回コールドで相馬東を下し、6年ぶり4度目の同大会進出を決めた。

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大ピンチを頼れる主将が救った。4点リードの9回裏、1点差に迫られなおも1死一塁。136球を投げた浅倉が足をつり降板。試合前に「いつ倒れてもいいから、お前は自分のピッチングをしてくれ」とエースを鼓舞していた田中は得意のスライダーを駆使し、5番保科寛大内野手(1年)を左飛、最後は押田直樹内野手(2年)を空振り三振に仕留めた。雄たけびを上げ喜びを爆発させた田中は「主将として人に厳しく言うからには、自分がしっかりしなきゃいけない」と緊急登板にも動じなかった。

甲子園の入場行進曲でおなじみの「栄冠は君に輝く」を代表曲とし、NHK朝の連続テレビ小説「エール」のモデルで作曲家の古関裕而氏はOB。練習後に全員で校歌を斉唱するのが伝統だ。「メモリアルイヤー」に甲子園の期待も高まる。渡辺監督も「エールの放映は生徒に励みになった。世の中がこういう状況なので、今度はこのチームが人々に『エール』を与える試合をしてほしい」と期待する。準々決勝では1イニング19点、1試合27点の県大会新記録。この日も12安打中長打は1本も、6回に3連打で追加点を奪うなど、思いをつなぐ「エール打線」が真価を発揮した。

田中は梁川中時代に県大会で優勝。オール県北では佐藤陸翔外野手、飯塚陸内野手、熊坂瑛郁捕手(いずれも2年)らとともに全国大会を経験し「福商で甲子園」と誓い合い入学した。「私学に勝って浮ついた気持ちがあると思うので、しっかり切り替えたい。優勝して東北大会に行き、センバツに出場するのが目標」と、大きな1勝に満足することなくさらに先を見据えた。【野上伸悟】

▽学法石川・石井翔太主将(2年=背番号13の主将は7回に代打で反撃ののろしを上げる左前打)「最後に底力は見せられたと思う。監督からは明日もあるので暗い顔をするなと言われた。切り替えて臨みたい」