初甲子園で全国1勝を刻む。第93回選抜高校野球大会(3月19日開幕、甲子園)に初出場する柴田(宮城)は昨秋、守備からリズムを作り、攻撃につなげるスタイルで、県3位から東北大会準優勝の快進撃を演じた。同校のある柴田町にまたがる白石川沿いの「一目千本桜」は、「さくら名所100選」に入る景勝地。連載「柴田七本桜の陣」と題し、チームのカギを握る7人を紹介する。

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柴田の遠藤瑠祐玖(るうく)主将(2年)がチームを引っ張る。ポジションは遊撃手。内野の要として試合中の声掛けは自ら徹底して行う。軽快な動きで守備範囲も広い。昨秋は県大会、東北大会とエース谷木亮太投手(2年)の窮地を何度も救った。遠藤主将は「守備の捕球には自信があるけれど、甲子園に向けてまたしっかり準備していく」と力を込めた。

憧れの主将像がいる。19年春夏に智弁和歌山で主将を務め、5季連続で甲子園出場を果たした楽天黒川史陽内野手(19)だ。「主将としての姿勢がすごくかっこ良かった」と心を奪われた。リーダーとしての目配りと気配りを意識し、常にチームの先頭に立ち続ける。「甲子園で勝つチームを目指している。自分が率先して1つにまとめていきたい」と自覚をにじませた。

絶大な勝負メシがある。寮生で週末になると温かい手料理を両親が寮まで届けてくれる。中でも、父の作るシンプルなオムライスが一番のお気に入り。「とてもおいしい。特別な感じがするので、試合前には食べるようにしている」。東北大会期間中はほぼ毎回リクエスト。ペロリと平らげて、翌日の試合に臨んだ。

地元に勇気を届ける。石巻市出身で鹿妻小1年時に東日本大震災を経験。「津波を目の前で見た。今でも覚えている」。校庭は浸水し、高台の体育館に避難。家に帰れたのは3日後だった。翌12年春、21世紀枠で石巻工がセンバツに初出場した。「地元がかなり盛り上がった。自分も被災地出身として、地域の方に元気を与えたい」。震災から10年の月日が流れ、野球少年は高校球児になった。使命感を胸に憧れの聖地に立つ。【佐藤究】

◆遠藤瑠祐玖(えんどう・るうく)2003年(平15)9月10日生まれ、宮城・石巻市出身。就学前から鹿妻子鹿クラブで野球を始め、渡波中時代は宮城北部シニアでプレー。中2春に全国選抜に出場。173センチ、65キロ。右投げ右打ち。血液型A。名前の由来は父の夢に「るうく」が出てきたから。家族は両親と姉瑠優雅(るうあ)さん、兄瑠冴雅(るきあ)さん。