運命的な“引き”を見せた。第93回選抜高校野球大会(3月19日開幕、甲子園)の組み合わせ抽選会が23日、センバツ史上初のオンラインで行われた。観客数を制限して開催準備を進める中、昨秋東北王者の仙台育英(宮城)は大会第1日の第2試合で明徳義塾(高知)と対戦。第1日の出場6校から選ぶ選手宣誓のくじは、島貫丞(じょう)主将(2年)が引いた。宮城県勢では12年春の石巻工(宮城)以来、9年ぶり。東日本大震災から10年。被災地への思いを背負い、春の聖地で大役を果たす。

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予感は的中した。組み合わせ抽選会で仙台育英・島貫主将が大会第1日の第2試合を引き当てた直後。「もしかしたら、選手宣誓あるかも」。続いて選手宣誓を決めるくじ引き。確率は6分の1。くじの順番は3番目。「流れに任せた」と3番を選択し、運命を引き寄せた。須江航監督(37)から左肩をポンとたたかれ、少し笑顔を見せた。「やりたかった気持ちがあった。うれしい」と大舞台での大役を喜んだ。

福島市出身で福島・湯野小1年時に東日本大震災を経験。大きな揺れの中、学校のグラウンドに避難した。家族、自宅ともに難は逃れたが、当時の記憶は残る。13日に発生した最大震度6強の地震の際も、福島市に住む家族に、すぐに連絡して無事を確認。「節目の10年での選手宣誓は自分にしかできないと思う。被災された方々に勇気、感動をしっかり言葉で伝えたい」と引き締めた。小、中学校でも主将を務めて選手宣誓は2度経験済み。「少しは慣れているけど、甲子園なので緊張すると思う」。

昨春はセンバツ出場を決めながら無念の中止に直面した。涙を流した3年生の思いを引き継いだ島貫主将らが、昨秋の東北大会4試合で37得点を挙げる圧倒的な強さで連覇を果たし、再び春の切符をつかんだ。須江監督は「震災、コロナ禍といろいろな思いが重なる年に東北代表として仙台育英のキャプテンである島貫が選手宣誓を務める。運命を感じている。素晴らしい選手宣誓をしてくれると思っています」と期待した。

初戦の相手は、難敵の四国王者、明徳義塾。東北地区の代表校は春夏通じて甲子園優勝経験がない。悲願の大旗の白河越えに、須江監督は「3年生の気持ちを乗せて、2年分の戦いをする」と決意をにじませた。チームのスローガンは「日本一からの招待」。練習に対する姿勢、日常生活の態度を含め、日本一にふさわしいチームになることを心がけてきた。島貫主将は「招待されるようにしっかり戦う」と宣言した。【佐藤究】

◆島貫丞(しまぬき・じょう)2003年(平15)5月18日生まれ、福島市出身。5歳から野球を始め、中学時代は系列の秀光中教校(宮城)軟式野球部に所属し、中3時に全国中学総体で準優勝。仙台育英では2年秋からベンチ入り。守備位置は左翼手。172センチ、74キロ。左投げ左打ち。家族は両親と姉。好きな選手はイチロー。

◆宮城県勢の甲子園選手宣誓 センバツでは12年の阿部翔人(石巻工)に次いで9年ぶり2度目。夏は48年石川喜一郎(石巻)89年高橋左和明(仙台育英)の2度あり、仙台育英が務めた89年は大越基投手を擁し準優勝した。

◆東日本大震災直後の選手宣誓 センバツでは震災直後の11年3月23日、創志学園・野山慎介主将が「私たちに今できること。それはこの大会を精いっぱい元気を出して戦うことです。がんばろう!日本。生かされている命に感謝し、全身全霊で正々堂々とプレーすることを誓います」と宣誓し、スタンドから大きな拍手が送られた。翌12年は自宅が全壊するなど被災した石巻工・阿部翔人主将が「日本がひとつになり、その苦難を乗り越えることができれば、その先に必ず大きな幸せが待っていると信じています。だからこそ、日本中に届けます。感動、勇気、そして笑顔を。見せましょう、日本の底力、絆を」と宣誓した。

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