今秋ドラフト候補で東邦(愛知)の鈴木唯斗外野手(3年)が4日、練習試合の市和歌山戦(市和歌山グラウンド)でエース小園健太投手(3年)から長打2発を放った。同点に追いつかれた直後の7回。無死一塁で小園の外角速球を強振して右翼に二塁打。3点奪取の起点になった。圧巻は9回だ。外角144キロ速球をとらえると、中堅フェンス直撃の二塁打を放った。

「小園とは中学校のころも一緒のリーグで戦った。中学校のころも三振していた。いい投手だし、甲子園でもあれだけ活躍した。絶対に打ってやろうと」

愛知の覇を競う東邦にとって、小園との対戦は「仮想畔柳」になった。センバツで活躍した中京大中京・畔柳亨丞投手(3年)を攻略しないと、夏の甲子園は遠い。鈴木は「球の速さは似たものがあって、小園をしっかり打たないと愛知県大会は勝てない。小園を打てば畔柳も絶対に打てる」と語気を強める。7回は3安打の猛攻で勝ち越した。

鈴木は非凡な打撃センスを示す。憧れはイチロー氏とレッズ秋山だ。「僕は長打が少ないけど、しっかり芯に当てるアベレージヒッターになりたい」。高校通算27本塁打で長打力も持つ。山田祐輔監督(30)も「力強いスイングにパワーもある。好投手から長打を打てるのが魅力」と評した。

畔柳への対抗心を隠さない。鈴木は中学時、SASUKE名古屋ヤングで同僚だった。センバツ中も話した。「甲子園はめっちゃいい。夏、もう1回、あの舞台で投げたい」と明かされると、間髪入れずに「俺も狙う!」と言い返した。

「僕はまだ甲子園に出ていない。亨丞もすごい部分はたくさんある。中学からやってきたので負けたくない気持ちは強い」。

東邦は19年に石川昂弥(現中日)を擁してセンバツで優勝したが、昨秋は東海大会で県岐阜商に敗れて春切符を逃した。山田監督は「畔柳君には秋(秋季愛知大会決勝)負けている。好投手を夏は打たないと勝てない」と話す。センバツ4強の中京大中京、享栄、愛工大名電…。宿敵の存在が春夏甲子園通算75勝の名門を強くする。【酒井俊作】

◆鈴木唯斗(すずき・ゆいと)2003年(平15)11月4日、名古屋市生まれ。名古屋・高針台中ではSASUKE名古屋ヤングに所属し、畔柳とチームメート。18年に投手でU15日本代表としてW杯に出場。東邦で1年春からベンチ入り。3年で主将を務める。高校通算27本塁打。177センチ、81キロ。左投げ左打ち。