今秋ドラフト候補で高校通算34本塁打の智弁学園・前川右京外野手(3年)が苦しみながら前進した。法隆寺国際戦を制して8強に駒を進めたが、1回の攻撃でいきなり猛省した。1死二塁の先制機。速球を2球見送って追い込まれ、カーブで見逃し三振に倒れた。

「チームに悪い流れを持ってきてしまった。いつもは1打席目からズルズルいくところを、2打席目にセンター前に打てました」

3回2死後、左腕のチェンジアップを中前へ。フライアウトも2本あった。力みは空回りを生むが、この日は意地の1本を放った。

忘れられない悔しさがある。3月のセンバツ明豊戦は4打数無安打。3点差の8回は好機で併殺に倒れて敗戦の責任を痛感し、涙を流した。映像を見直し、自らを見つめた。「チームの打撃で動いていかないといけない。いい形で4、5番につなぐ打撃が大事」。気合と気負いは紙一重。主砲が陥る1発狙いのワナを戒め、勝利の打撃に徹する。

この日はプロ4球団5人のスカウトが視察した。中日山本スカウトが「振る力がある。外の球をセンターに運んで器用さもある」と評すれば、阪神山本スカウトも「スイングは速い。評価は変わらない」と話す。屈辱を味わったセンバツを糧に、どっしり構えて勝負に挑む。【酒井俊作】