智弁和歌山が、2年ぶり14回目の春の県優勝を果たした。最速152キロ右腕の市和歌山・小園健太投手(3年)を攻略するため、160キロのマシン打撃を敢行。甲子園最多68勝を誇る同校の高嶋仁名誉監督(74)の孫、高嶋奨哉内野手(3年)が公式戦2本目のアーチで貢献し、エース中西聖輝投手(3年)も9回完投。今秋ドラフト候補の小園は、救援で4回5失点と精彩を欠いた。

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まだ春なのに、常勝校の重圧は尋常ではなかった。「この試合、負けたら終わり、と思っていました」と話したのは高嶋だ。今秋ドラフト上位候補の小園を擁する市和歌山に、昨年の公式戦で3連敗中。小園が6回から救援すると、目の色を変えて襲いかかった。

1点リードの7回に1点を追加し、8回は猛攻をかけた。先頭の徳丸天晴外野手(3年)が151キロ速球を捉えて、左越え二塁打。5安打を浴びせて4点を奪い「打倒小園」を果たした。元阪神の中谷仁監督(42)は「小園君に対して準備をしっかりしてきました。対応は今日に限ってできた。また先がある」と気を引き締めた。

春から160キロに設定した打撃マシンを打ち込んできた。センバツ出場を逃し、小園の甲子園での登板映像を使ってミーティング。心身ともに整え、強敵を打ち破った。甲子園常連校のプライドを誰よりも痛感するのは高嶋だろう。

祖父は同校の高嶋名誉監督。不調になったら、電話して助言を仰ぐ。前日も「思い切りがない。迷わず、打てると思ったらしっかり振れ!」と声を掛けられた。1点リードの4回。高嶋は先頭で速球を強振し、左翼にソロ弾を放った。「ちょっと詰まったけど、行ったなと」。高校通算5本塁打を見届けた高嶋名誉監督も目を細める。「ホームランバッターじゃない。しっかり振り切った結果、飛んでいった。甲子園で打ったら褒めてやらんと。今、褒めたらえらいことや」。難敵に完勝し、強い智弁和歌山がよみがえった。【酒井俊作】

◆高嶋奨哉(たかしま・しょうや)2003年(平15)12月19日、和歌山・紀の川市生まれ。奈良・二上小2年から二上スポーツ少年団で野球を始めて小学4年で和歌山の学校に転校。根来ファイターズに所属し、6年時は阪神タイガースジュニアでもプレー。岩出第二中では粉河シニアに所属し、主に三塁手。好きな選手は広島鈴木誠。173センチ、76キロ。右投げ右打ち。父茂雄さんも智弁和歌山で甲子園出場。