世代最速の157キロが出た! 今秋のドラフト1位候補でノースアジア大明桜(秋田)のエース右腕、風間球打(きゅうた)投手(3年)が、準々決勝の秋田戦で、自己最速を一気に4キロ更新。150キロ台も17球と快速球を連発した。

延長10回を155球で7安打3失点(自責2)で完投。三振も12を数えた。視察に訪れた10球団18人のスカウトの前で、ポテンシャルの高さをいかんなく示した。

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風間が衝撃の157キロをさく裂させた。4回2死走者なし。相手の4番を3球で追い込むと、全身を使い、帽子を飛ばしながら右腕を振り切った。会心の真っすぐが捕手中井のミットをたたき、空振り三振。「本当に、いつのまにかキャッチャーミットについている感じで、今までにない感覚でした」。スコアボードには「157キロ」の表示。4000人の観客がどよめき、「三振で戻るときに『おー』という声が聞こえて、見たら157で、自分でもびっくりしました」と笑った。

初回から最終10回までアクセル全開だった。1回無死一塁。151キロの直球で併殺とし、この試合初めて150キロ台をマークした。そして延長10回の149球目でも150キロ。「2、3番手(の投手陣)と、後々のことを考えたら打たれてしまうと話していて、全力で投げる意識で初回から飛ばそうと思ってました」と6、9回を除く8イニングで150キロ台(150キロ7球、151キロ5球、152キロ1球、153キロ3球、157キロ1球)を計測。すごみを見せた。

延長戦を投げるのは昨秋の県大会1回戦以来だった。その試合は3番手で登板し、10回2/3を2安打1失点(自責0)の12奪三振。145球の力投も、タイブレークの末に敗戦投手になっていた。この日の秋田戦では足がつりそうになる場面もあったが「最後は気持ちが勝って、無の状態で投げられてよかったです」と乗り切った。昨冬から増やした走り込み。課題だったスタミナも問題ないことを証明した。

これまで世代最速だった154キロ右腕の高知・森木と大阪桐蔭・関戸を3キロ上回ったが、これも通過点。「夏(の目標)は158キロ。その1キロはけっこう難しい部分があるが、まずは優勝する気持ちでピッチングしていきたい」と言い切った。4年ぶりの甲子園へあと2勝。風間の1球1球が今夏、新たな伝説を刻む。【山田愛斗】

▽西武渡辺GM 球の強さは今年の高校生の中でも1、2を争うような印象を受けている。身体能力が高いし、何よりも走っている姿がいい。それがいいピッチャーに大成する可能性がある。これからまだまだ伸びてくるし、将来が楽しみ。

▽楽天宮越スカウト 春よりも力を入れる場面、抜く場面を投げ分けられるようになった印象がある。(市和歌山)小園君とかと比べても、遜色ない1位の素材だと思う。

▽日本ハム白井スカウト 真っすぐ、変化球を含めて強弱をつけてピッチングを組み立てられるようになっている。まだ高校生なのに150キロを普通に投げているし、将来はどこまでいくんだろうと感じている。

▽巨人水野スカウト部参与 去年から経験を積み、投手としてかなりいいんじゃないかと思う。甲子園という大舞台で、大阪桐蔭とか有名チームに投げている姿を見てみたい。

▽ヤクルト斉藤スカウト 今までは真っすぐは常に全力でいく剛腕のイメージがあったが、緩急を使ったり、軟らかいところも持ち合わせるようになった印象がある。1位じゃないと取れないと思う。

▽広島近藤スカウト 6月の県大会ではあまり調子が上がっていない印象を受けたが、今夏は球の質が全然いいし、角度もいい。高校トップクラスの素材であることは間違いない。

◆高校生の球速 甲子園で157キロ以上を出したのは、01年寺原隼人(日南学園)の158キロだけ。寺原は大リーグ球団のスピードガン計測によるもので、球場表示では07年佐藤由規(仙台育英)13年安楽智大(済美)の155キロが最速だ。地方大会などを含めると、佐々木朗希(大船渡)が19年4月のU18合宿で走者を置いたケース打撃練習中に出した163キロが最速。

<今夏の主な150キロ超投手>

高知・森木大智 154キロ 22日初戦

大阪桐蔭・関戸康介 154キロ 3回戦進出

中京大中京(愛知)・畔柳亨丞 152キロ 4回戦進出

享栄(愛知)・肥田優心 152キロ 4回戦進出

市和歌山・小園健太 152キロ 3回戦進出

大阪桐蔭・松浦慶斗 150キロ 3回戦進出

中央学院(千葉)・細谷怜央 150キロ 準決勝進出

立花学園(神奈川)・永島田輝斗 150キロ 4回戦進出

○…春夏通算24度の甲子園出場を誇る県内屈指の進学校・秋田が、第1シードのノースアジア大明桜をあと1歩まで追い詰めた。最速144キロ右腕、石井夢沙士(むさし)投手(3年)が10回4失点で完投。風間と互角に渡り合った。「自分たちの持ち味は頭を使った野球」という頭脳派集団らしく隙を突いたプレーで揺さぶり、8回に同点に。延長10回にも走者を出して粘ったが、及ばなかった。