涙の満塁弾だ。専大松戸が、6年ぶり2度目、春夏連続の甲子園出場を果たした。関東一番乗りで甲子園出場を決めた。2年連続同カードとなった決勝は、延長12回を終わり6-6で決着がつかず。決勝戦史上初のタイブレーク方式に突入した延長13回裏、無死満塁から吉岡道泰外野手(3年)の劇的なサヨナラ満塁弾で幕を閉じた。専大松戸は今春、センバツ初戦敗退の悔しさを晴らすために、聖地に帰る。

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神様、どうか打たせてください-。無死満塁で打席に向かう吉岡は打席の手前で手を合わせ、ほんの数秒間、目をつむった。延長13回裏「ここで決める」。野球の神様を味方につけ、打席に向かった。

チームメートの笑顔も力に変えた。カウント1-2でベンチを向くと「打てよー!」。たくさんの笑顔が目に入り、吉岡も笑顔で応えた。「大丈夫、みんながついている」。直後の4球目、真っすぐを振り抜いた。「打った瞬間、入ると思いました」。打球は右翼スタンドに吸い込まれた。二塁を回ったあたりで抑えきれない感情が涙となってあふれた。三塁を回り本塁で待ち構えるチームメートの笑顔に再び涙があふれた。「みんな…ごめん…ありがとう…」。生還すると泣き崩れた。

今春センバツの中京大中京戦でダイビングキャッチを試みたが捕球できず、決勝のランニング2ランを許し号泣した。「自分が捕球していれば勝てたかも」と何度も自分を責めた。あの試合から約4カ月。悔し涙がうれし涙に変わった。

主将経験が成長を後押しした。センバツ後2カ月、主将を務め、周りを見る力がついた。守備では打球を見極め落ち着いてプレー。恐怖心が消え、守備は誰にも負けない自信がついた。今では「センバツでのプレーがあったから成長できた」と胸を張って言える。

悔しさを忘れてはいない。センバツ敗戦の翌朝。一睡もできず、朝の6時に1人で部屋を出た。「悔しさから逃げちゃダメだ」。ホテル内のコンビニでスポーツ紙をお小遣いで購入した。「自分の記事が大きく載っていた。一生、忘れてはいけないと思いました」。その新聞は大切に保管してある。次は必ずチームを勝利に導く。目指すは全国制覇。吉岡が、リベンジの舞台、甲子園へ帰る。【保坂淑子】