東北学院は創部50年目で春夏を通じ、初の甲子園に挑む。来春に男女共学となるのを控え、男子校として最後の夏を飾った。記念すべき初戦の相手は愛工大名電。春のセンバツを含め、甲子園で宮城勢と愛知勢が戦うのは初めて。東日本大震災から10年、選手たちは“東北魂”と“男子校魂”を旗印に、復興途上の被災地に元気を届ける。

宮城大会は第3シードから決勝に初めて進出。12-5で仙台三に逆転勝ちし、県勢として14校目、私学で4校目の甲子園切符をつかんだ。3日のオンライン抽選会で31番くじを引き、愛工大名電との対戦が決まった。古沢環主将(3年)は「打ち勝つ野球をテーマに全員でつないで得点できるのが、うちの強み。たくさんの方々に応援していただいているので全力で戦いたい。震災から10年に甲子園でプレーできるのは光栄です。宮城のみなさんにいい報告ができるように頑張りたい」と力を込めた。

県大会(計6戦)のチーム打率は3割1分9厘。どこからでも得点できる「つなぐ打線」を目指す。先発全員が3年生。県大会ではエースで4番の伊東大夢と3番・及川健成の8打点を筆頭に、先発全員が打点をマーク。クリーンアップと先頭打者もこなす副主将の大洞雄平は、チーム首位の打率4割5分8厘。9番・武田修弥も打率3割7分5厘で5割の高い出塁率を誇る。

投げては187センチのエース右腕・伊東が全6戦に登板。うち3戦に先発し、準決勝、決勝と連続完投して主戦の務めを果たした。高さを生かした角度のある最速147キロの速球が持ち味。6戦で3四球の制球力と1試合平均10・5の奪三振率でチームを引っ張る。中野小1年時の東日本大震災の津波で自宅が全壊。支えてくれた人々への感謝の気持ちを白球に込める。

愛工大名電は3年ぶり13回目の甲子園出場。群雄割拠の愛知大会では準決勝で、甲子園7度優勝の中京大中京を下して勝ち上がった。最速145キロのエース左腕・田村俊介主将(3年)、同147キロ右腕・寺嶋大希ら3投手を擁する。東北学院・渡辺徹監督(50)は「胸を借りるという部分と同じ高校生ですので、戦ってみないとわからないというところがある。お互いに力を発揮し尽くすような戦いができれば」と全国初采配の抱負を語った。【佐々木雄高】

◆東北学院 1886年(明19)「仙台神学校」として発足。その後、1891年(明24)、「東北学院」と改称。生徒数は945人。野球部は72年(昭47)創部。部員数は68人。甲子園出場は今年が春夏通じて初。打ち勝つ野球が特徴。地方大会6試合で53得点。戦力評価B。主なOBに西武本田圭佑。

◆愛工大名電 1912年(大元)創立の私立校。普通科、科学技術科、情報科学科がある。生徒数1936人(女子659人)。野球部は55年(昭30)創部で部員数49人(マネジャー5人)。甲子園出場は夏が13回目で、春は9回。優勝は春1回。プロ注目の投手3本柱に加え、打線も強力。戦力評価A。主なOBは工藤公康(ソフトバンク監督)、イチロー(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)ら。