ロースコアでのサヨナラ負け。ベンチワークが試合の流れを左右する展開に、県岐阜商・鍛治舎巧監督(70)には悔いが残る試合となった。

2回表1死満塁で8番湊将悟(3年)がスクイズを失敗、先制機を逃した。「カウント1-0からの2球目に仕掛けず、1球待って1-1からサインを出してしまって、外された。明徳の代木君は初球ボールが入ることが多いので“2球目”と思ったんですが…」。本塁がフォースプレーとなるため、スクイズが難しいシチュエーションが影響したのかもしれない。

1点先取直後の6回裏に逆転された。1死走者なしから、左翼の広部嵩典外野手(3年)が目測を誤り、二塁打にした。すぐに後藤耀介(3年)と交代させた。「(広部は)送りバント1つと凡打2つだったので、その前に代えようと思ったんですがね。あれは私の責任です」という。

その後、先発左腕の野崎慎裕(のりひろ、3年)を続投させ、三塁打と犠飛で逆転を許した。「本当は代え時だったかもしれませんが(野崎は)ずっとチームの中心で投げてきた子ですので…。私の判断がちょっとまずかったのかもしれません」。球速140キロ超の投手を5人抱え、継投もできた。実際、7回頭からスイッチした2年右腕・小西彩翔(あやと)は最終的にサヨナラ打を許したが、7、8回は不運な内野安打などを我慢し、無得点の力投を見せた。

「実はこちらに入る前から先発を小西と決めて、本人にも伝えていたんですが、こっちで雨で3日延びて、野崎も調子を上げてきた。昨晩にメールで“いけるか?”と聞くと“万全です”と返して来まして。なら、ここは経験豊富な野崎でいこうと決めた」。しかも、野崎は5回まで被安打1の無失点だった。

“名将対決”で注目を集めた試合を終え、敗軍の将は明徳義塾の馬淵監督をたたえた。試合の最大のポイントに挙げたのは、6回表の攻撃。「先制点を1点取って、4、5、6番でもう1点何とか取りたかった」という。ところが、明徳義塾が無死三塁で継投し、目先を変えられた。馬淵監督の一瞬の決断を「よくあそこで代えたなと思います」と振り返る。この日の自身の采配が微妙に遅れがちだったこともあり、そう思ったのか。

「馬淵さんの野球を(甲子園中継のテレビ解説などで)ずっと見てきて、特に最近は確率の高いものに変わってきたと思う」。例えに出したのはブラッド・ピット主演で11年に公開された米国映画「マネーボール」だ。「あの映画のようです。確率の高い野球。例えば誘い球を打ちに来ない。今日も(自軍には)四球が効きました。選んで、選んで、選び抜いて塁に出る」。サヨナラの本塁を踏ませたのは、この日与えた6四死球目の選手だった。【加藤裕一】

◆監督通算勝利 明徳義塾・馬淵監督が甲子園通算52勝目を挙げ、監督勝利数で単独4位に浮上した。