津軽の「コウセイ」こと、弘前学院聖愛(青森)の2年生エース、葛西倖生投手が134球の力投も甲子園初戦で力尽きた。

1球に泣いた。2-2の8回1死二塁。5番宮本に投じた2球目だった。真ん中低めのツーシームをすくい上げられ、打球は無情にも左翼スタンドへ。痛恨の決勝2ランを許した。「1球で修正する力が足りなかった。甘く入った球を打たれてしまった」と力なく振り返った。

決して1人ではなかった。本塁打を打たれた直後、松坂映杜(えいと)捕手(3年)が、マウンドに駆け寄ってきた。「笑顔でいこうや。絶対逆転するから」。先輩でもあり女房役の言葉に、奮い立った。後続は打ち取り、8回を7安打4失点の完投。「(松坂捕手の)『笑顔』の言葉に気持ちを切り替えることができた。みんなが後押ししてくれていて1人じゃなかった。先輩には『ありがとうございました』と伝えたい」と感謝の言葉を口にした。

18年夏、甲子園準優勝した金足農(秋田)の吉田輝星投手(現日本ハム)に憧れを持ち、本家同様の直球を目指してきた。初回1死満塁のピンチで奪った2者連続三振は、いずれものびのある140キロ直球だった。「甲子園に立てたことは自信になった。吉田さんのように最後まで気持ちを切らさないような投手になりたい」とさらなる成長を誓った。

まだ1年ある。心は次に向かう。「来春センバツ、来年の夏の甲子園を目指してやっていきたい」と力を込めた。敗戦を糧に、この日の借りを返しにいく。【佐藤究】