<全国高校野球選手権:智弁学園5-0横浜>◇21日◇2回戦

横浜(神奈川)金井慎之介投手(3年)は、1イニングに2年半の思いを込めた。0-5で迎えた8回裏のマウンド。思い切って腕を振り3安打されるも無失点。試合後、智弁学園の校歌を聞きながら天を見上げると涙があふれた。「小さいころから憧れでした。特別な思いがあったので…投げていて楽しかった」と胸を張った。

「投手」をあきらめないー。2年秋には最速148キロ左腕としてエースに。しかし左肘痛の影響もあり、今春の県大会準決勝で先発したが、制球を乱し序盤で降板。「このまま投手をやっていいのかな…」。不安を抱えたまま、休養日に川崎にある実家へ帰省した。 出迎えた父・紀幸さんに「キャッチボールをやるか」と誘われ近くの公園に出掛けた。1球、2球…制球が定まらない。「その時、父が言ったんです。自分のボールはお前が一番知っているだろ。思い切って投げればいいんだ、って」。小さい頃、父とキャッチボールをしたことがよみがえる。ボールから伝わる父の愛情。「僕は野球が大好きなんだ」。胸のつかえが取れた気がした。原点回帰の父とのキャッチボール。「チームのために自分の役割を全うする」と心に決め背番号7で夏に挑んだ。

将来の目標は、投手としてプロの舞台に立つこと。甲子園の1イニングは投手として復活の第1歩。「甲子園で全力を出すことができました」。次の野球人生に力強く踏み出す。【保坂淑子】