<全国高校野球選手権:長崎商6-2専大松戸>◇22日◇2回戦

専大松戸(千葉)の吉岡道泰外野手(3年)はベンチ前でのあいさつが終わると、たった1人、相手ベンチと甲子園球場に向かい深々と頭を下げた。「この素晴らしい舞台に、選手として立てたことに、感謝しました」。

夏は涙で終わりたくないー。「泣く寸前でしたが、この仲間と野球ができて本当に幸せだったと思ったら笑顔になりました」。涙を浮かべる下級生の肩を優しくたたき、笑顔で声をかけた。

センバツの中京大中京戦でダイビングキャッチを試みたが捕球できず、決勝のランニング2ランを許し号泣した。今大会直前「正直、春の関東大会まで、引きずっていました」と本音を打ち明けた。グラウンドに立つと「また落としたらどうしよう」と悪いイメージが頭をよぎる。「もう1度甲子園に戻る」と強気に振る舞うも、心がついてこなかった。

夏の大会では毎日の生活ルーティンを作った。朝はゆっくり朝食を取り、熱いコーヒーで締める。試合は集合時間の1時間前に到着し、1人で汗をかいて試合に備える。心静かに試合に臨んだ。「春の悔しさは引きずらない」。無理やりでもいい。必死に前だけを向いて駆け抜けた夏だった。

甲子園は2回戦敗退も、3回は吉岡の左前打をきっかけに同点に追いついた。

涙で終わったセンバツから約5カ月。夏の甲子園は笑顔で締めた。「もう春の悔しさはありません」と優しくほほ笑んだ。将来の夢は高校野球の指導者になること。「この夢舞台を自分で作り、最高の野球人生にしたい」。再びこの聖地を目指す。【保坂淑子】