近畿勢が史上初めて夏の甲子園の4強を独占し「地の利甲子園」になった感がある。長雨の影響で、史上最多の7度の順延。8月中旬、試合が雨で流れ、昼食で通りかかった道に偶然、東日本の出場校のバスが停まっていた。工場も近接する神戸市内の室内練習場で練習しているのだろう。外は雨。2人がマシン打撃できるくらいの広さだった。こんな手狭なところでやっているのかという印象だ。

この日、近畿の躍進について明徳義塾(高知)の馬淵史郎監督(65)は「近畿の高校野球のレベルが非常に高くなっている」と評した上で「これだけ雨で延びたら、我々、練習するところがない。地方から来ている学校はなかなか思うように練習会場を確保できない」と、順延期間中の実情を明かした。3回戦敗退の二松学舎大付(東東京)の市原勝人監督(56)も「民間の打撃できる場所は確保できたが打つだけ。窮屈で、野球をできている感じがない」と話した。

近畿勢は対照的だった。数年前から大会中、近畿の出場校は日本高野連の要請で、できる限り宿舎から自校の練習施設に通う形をとるという。より多くの学校が、限られた練習場を使えるようにするための措置だ。この日、智弁学園(奈良)の小坂将商監督(44)は近畿勢の活躍を「調整で、近畿は帰れる。地方はそういう部分はしんどい」と話し、智弁和歌山の中谷仁監督(42)も「宿舎から自校のグラウンドに通わせていただいていた」と明かした。晴れた日は実戦練習を行える。普段から親しんだ環境でひと息つけるなど、メリットは多い。

大会本部は「過去の大会では近畿の学校が自校で練習するケースがあったが、今回は練習場所などは公表していません」と説明した。実際、近畿以外の出場校はOBや知人のつてで練習場を確保するケースも多いという。実戦感覚の維持は容易ではないだろう。台風や長雨で、練習環境における懸案が浮き彫りになった。今後に向けて、改善を待ちたい。【酒井俊作】

◆近畿大会? 今大会は不戦勝の智弁和歌山を含めて史上初めて全6校が初戦を突破。8強に5校が残ったのも初めてだった。大阪桐蔭と神戸国際大付はともに近江に敗れており、近畿勢は優勝校を除いて同じ近畿勢にしか負けないことになる。