夏の甲子園を優勝した智弁和歌山が、延長戦の激闘を制し、和歌山大会新人戦の頂点に立った。無死一、二塁から始まるタイブレーク制となる13回、1死二、三塁の好機を築き、塩路柊季投手(2年)が左前にサヨナラ打を放った。

終盤にリリーフ陣が失点を重ねたが、打線が粘りの反撃。2点を追う8回には4番の武元一輝投手(2年)が2打席連続本塁打のソロアーチを右中間に放って1点差に詰め寄り、内野ゴロの間に追いついていた。

投打で奮闘したのが武元だ。先発して140キロ台の速球も用いて6回4失点。3点を追う6回も右翼に2ランを放って1点差に迫った。「4失点してふがいない気持ち。悔しさが残る。投球が悪かった。打撃で取り返そうと思った」と振り返った。最速148キロの右腕で、打撃でもセンスを発揮。「二刀流ならメジャーで活躍している(エンゼルスの)大谷さんがいる」。二刀流に挑戦する構えだ。

8月、夏の甲子園では決勝で智弁学園(奈良)と対戦し、完勝で優勝した。中谷仁監督(42)は新人戦で立て続けに優勝しても、厳しい表情だった。

「ウチのチームの力をもう1度、見つめ直さないといけない。守れない、打てない、たたみかけられない…」

象徴的な場面がある。同点の6回1死三塁。内野は前進守備を敷き、二塁小畑虎之介内野手(1年)の正面にゴロが飛ぶ。三塁走者は本塁突入。小畑も本塁送球したがワンバウンドの悪送球になって勝ち越しの生還を許した。その直後、二塁は坂尻翔聖内野手(2年)に交代させた。「同じ失敗を何度もしている。戦う集団において出てはいけない状況だった」と指揮官。痛恨の失策が引き金になってさらに2点を奪われて、3点リードを許す展開になってしまった。鬼采配で勝負の厳しさを突きつけた。

苦しい戦いだったが、粘り強く戦い、劣勢を跳ね返した。新主将の岡西佑弥内野手(2年)は「どんな状況でも勝ちきることができてよかった。反省点も出ました。(打撃で)打ち上げたり、ズルズルいって守備でエラーして投手のリズムを作れない。1つ1つつぶさないと。簡単に日本一になれない」と振り返った。再び全国の頂点へ。王者の意地が光った一戦。優勝して気を引き締め直した。