規格外の1年生スラッガーが今秋公式戦で初アーチをかけた。

花巻東は黒沢尻工を19-11の7回コールドで破り、6年連続4強入りを果たした。佐々木洋監督(46)の長男麟太郎内野手(1年)が「3番一塁」で先発出場。初回に高校通算33号となる先制2ランを放ち、3打点3四死球と貢献した。1点を追う3回には田代旭捕手(2年)が勝ち越しの3ラン。最大8点リードから一時は1点差に詰め寄られたが、自慢の強力打線でねじ伏せた。19日の準決勝ではライバル盛岡大付と対戦する。

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佐々木麟が三度目の正直弾だ! 1回1死一塁、カウント1-2から内角スライダーを豪快なフォロースルーで右翼芝生席に運んだ。「黒沢尻工業さんは打撃力が高いチーム。何とか初回に先制点がほしいところで2番が出塁し、ヒットでつなぐ意識で先制点が取れて、いい打席になりました」。打った瞬間に確信する1発。2球目は右翼、4球目は左翼へ、いずれも本塁打級の特大ファウルを飛ばすと、6球目を見事に仕留めて笑顔で生還した。

今夏の岩手大会では1年生レギュラーとして甲子園を目指した。「2番一塁」を定位置に2本塁打。しかし、3番で起用された決勝の盛岡大付戦では4打数無安打と封じられた。それ以来、調子を落とした時期もあったが、先制弾でチームを勢いづけた。「しっかりボールと向き合い、甘い球を仕留められるように秋までに成長できたと思います」。左打者の佐々木麟は春、夏は右翼方向にしか強い打球を飛ばせなかったが、逆方向を意識して練習を重ね、初回、左翼への大ファウルで進化を印象づけた。

高校入学からわずか5カ月半で驚異的な数字を残す。通算本塁打は7月24日の県決勝まで22本だったが、そこから53日間で33本まで伸ばした。「自分はチームに貢献することしか考えてなくて、強い打球を打つ延長線上でホームランが出ていると思っています」と無欲で結果につなげている。

春、夏とマリナーズ菊池雄星、エンゼルス大谷翔平らが下級生時に背負った出世番号「17」をまとい、今秋から新たな相棒の「3」で臨んでいる。「チームとして期待されている番号が花巻東の17番です。ここから1ケタに上がったということはレギュラーとして、より自覚を持たないといけないと思います」。準決勝は今夏の甲子園に出場した盛岡大付と戦う。「さらに調子を上げていけるように頑張りたいです」。天性のアーチストが次戦も強烈な一撃を放つ。【山田愛斗】