花巻東(東北・岩手)の1年生スラッガー、佐々木麟太郎内野手の全国デビューは1発で始まり、1発で終わった。

広陵(中国・広島)との名門対決は「3番一塁」で先発。一時同点となる高校通算49号を放った。しかし、打撃戦の末に9-10で敗れ、初出場での決勝進出は逃した。3回の第2打席に左足甲付近に死球を受けるアクシデントがある中、それ以降の3打席で右前打、左中間への2点適時二塁打、右越え同点3ランと今大会初の猛打賞をマーク。3試合通算で10打数6安打の打率6割、2本塁打、9打点2四死球の好成績を収めた。

佐々木麟が強烈なインパクトを残した。3点を追う8回2死一、二塁。カウント2-1からの4球目、見逃せばボールの128キロ真ん中高め直球を振り抜き、右翼席最前列まで持っていった。ダイヤモンドを回りながら「ヨッシャー」と雄たけびを上げ、右手でガッツポーズを繰り返した。ホームインすると、ネクスト・バッタースボックスで控える主将の4番田代旭捕手(2年)に向けて「次は任せたぞ!」と言わんばかりに右手で指をさし、左手でグータッチ。最大7点差を追いつき、反撃ムードを演出した。

「序盤に点差をつけられた中で自分たちは本当に逆転ができると思っていた。9、1、2番(打者)が自分に回すという言葉をかけてくれて『ここで俺が打ち、さらに流れを持っていくんだ』と打席に入った。とにかく気持ちでスタンドまで運ぶことができ、何とか同点まで追いつけたんですけど、最後に粘れなくて非常に悔しいです」

先月の東北大会期間中に左すねを骨折し、完治はしていない。さらに広陵戦の3回表に左足に死球を受け、打席付近に倒れ込んだ。顔をゆがめ、仲間の肩を借りながら治療のためにベンチに引き揚げ、臨時代走を送られた。「当たったときはくるぶし付近でもあり、痛みが急に走ってきたが、チームが勝つためには自分が出ないといけないと思い、何とか痛みをこらえながら気持ちで戻りました」。同裏の守備から復帰。以降に、3安打(1本塁打)5打点と爆発した。

20日の開幕試合、国学院久我山(東京)戦の第1打席でファーストスイングで先制ソロを放ち、鮮烈デビューを飾った。3試合で打率6割、2本塁打、9打点と存在感を発揮。幕末から明治期の政治家「勝海舟」の幼名に由来する、「佐々木麟太郎」の名前を全国とどろかせた。1年秋の時点で高校通算49号。猛スピードで進化する怪物から目が離せない。【山田愛斗】