捲土(けんど)重来への1歩をしるす。春季高校野球宮城県大会が14日開幕。県上位2校が東北大会(6月7日開幕、福島)に出場する。仙台育英(宮城)は15日、仙台城南と古川工の勝者と初戦を迎える。昨夏は県大会4回戦敗退。夏の甲子園返り咲きを目指すナインを率いる須江航監督(39)が、敗戦からの教訓を赤裸々に明かし、日本一実現へのビジョンを語った。

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仙台育英ナインは一冬で確かな力をつけ、春にその成果を発揮し、巻き返しの夏へと向かう。須江監督は現場の評価を口にした。

(昨夏、昨秋の)敗戦を糧に上級生(2、3年生)の成長が著しいです。フィジカルが劇的にアップしています。(試合出場の)機会に甘んじていた選手が多く出てくると思います。

昨秋の東北大会では準々決勝でセンバツに出場した花巻東に2-8で敗れ、春の甲子園出場を逃した。今冬はじっくり腰を据え、個のレベルアップはもちろん、チーム力向上に努めた。「センバツに出場できなかった分、チームの基礎力は上がりました。センバツに出場すれば高レベルを体感することで全国基準を知れる価値もあります。どちらが良いとは言い切れませんが、この冬はじっくり力を蓄えることができました」。

昨春はセンバツ8強入り。だが、夏は県大会4回戦で仙台商に敗れ、監督自身の考え方に変化が生じた。「選手を競争させることと育成することに重点を置きすぎてしまい、チームとしての成熟が後手に回ったのが敗因です」と分析した。それでもポリシーがぶれることはない。日本一熾烈(しれつ)な競争を求める。「選手の可能性を広げることと平等にチャンスを与えることが理念であることに変わりはありません。ただ、チームを成熟させるためにやり方であったり、タイミングにもう一工夫が必要でした」。日々、試行錯誤を繰り返しながら、選手と向き合い続ける。

高い志を持ち、日本一のビジョンを思い描いている。「打倒 大阪桐蔭」が選手間の合言葉。今春のセンバツで圧倒的な強さを見せ、秋の明治神宮大会に続く2冠を達成した全国屈指の名門。須江監督は「差は果てしなく大きいですが、(大阪桐蔭を)基準にやっていかないといけません。もちろん、県大会をしっかり勝ち抜いていく野球も必要ですし、大阪桐蔭に勝つための無数の策を試しておく必要もあると思います。最後『当たって砕けろ』みたいなことにはなりたくないです」。最優先は目の前の一戦だが、その先には常勝軍団・大阪桐蔭がいる。

この夏、仙台育英はどんな結末を迎えるのか? 高校野球史にまだ刻まれていない東北勢悲願の甲子園初優勝で夢物語を完結させる。【佐藤究】