秋田商が「ミラクル逆転劇」で春季東北大会(6月7日開幕、福島)の切符をつかんだ。9-9の同点で迎えた8回2死一塁、8番原田北翔内野手(2年)が値千金の決勝適時二塁打をマーク。両軍合わせて計29安打の乱打戦を制し、最大7点差をひっくり返す劇的勝利を決めた。12年ぶりの春の県王者を目指し、大会2連覇を狙うノースアジア大明桜との最終決戦に臨む。

寡黙な2年生がチームを東北大会出場へと導く、大仕事をやってのけた。歓喜に沸く仲間とは対照的に、原田に派手なガッツポーズはない。静かに二塁ベース上で決勝打の喜びをかみしめた。「心の中では『よっしゃー』と思っていましたけど、自分の感情はあまり表現しないタイプ」。打のヒーローは闘志を内に秘めている。

「抜けてくれ!」。白球にそう祈った。8回2死一塁。初球の内角直球を迷いなく振り抜いた打球は、ダイビング捕球を試みた左翼手のグラブ下を抜けていった。両軍合わせて計29安打の乱打戦。試合時間2時間54分のしびれるシーソーゲームにけりをつける一打となった。「初球から攻めていこうと思っていた」。果敢に振りにいった結果が、殊勲打につながった。

苦しい状況にも、ナインの気持ちは折れなかった。4回表終了時点で1-8とリードを許す展開。4回に四球と二塁打で1点を奪い、5回にも1点を挙げた。中盤から後半にかけて息を吹き返す。ベンチ内では「複数得点」と選手間で声をかけ合い、6回、7回に3得点ずつ。8回には長短4連打で4得点。最大7点差のビハインドにも、諦めない姿勢が大逆転勝利を呼び込んだ。「試合序盤に点数を取られて、焦りもありましたけど、チームのテーマでもある、攻めることを貫くことができた」と胸を張った。

春の秋田王者で東北大会に乗り込む。今日29日は、大会2連覇を狙う明桜との決勝戦。「東北大会出場はまだ通過点。練習の成果を出していきたい」と気持ちを引き締めた。【佐藤究】