初めて決勝に進んだ公立の生駒は、前夜までに主力選手12人が発熱などの体調不良を訴えていたという。

26日の準決勝で昨夏の甲子園で準優勝した智弁学園を破った快進撃は、憎き新型コロナウイルスに翻弄(ほんろう)されて途絶えた。

準決勝までに陽性者を出し、決勝進出を決めた26日の夜から前日27日にかけて体調不良者が続出した。

この試合までに陽性か否かの診断は出ず、北野定雄監督(63)は「12人全員がコロナかどうかも分からない。ただ、昨日から子どもたちは不安になっていたので、『全てを受け入れよう。受け入れた上で、相手の天理さんに失礼のない戦いをしよう』と伝えました。これ以上ない戦いをしてくれた。私は満足しています」。そう話すと、同監督の目からは、涙がこぼれた。

決勝戦で初めてベンチ入りした選手は11人。先発した1年生の草野純投手は、大会初出場だった。

北野監督は「(投手は)3年生はいない。2年生も熱を出している。『草野、お前しかいない』と今朝、彼に伝えました」と緊急登板だったことを明かした。

21点差を追う9回1死から野村拓内野手(3年)が、右中間へ三塁打。野村は「エラーしてもいい。打たれても仕方がない。とにかく諦めず、自分たちのプレーをしようと話していました。悔いは残ります。ただ、智弁に勝ってここまで来られたことは、僕たちの自信になる」と胸を張った。

体調不良の選手たちは球場に来ることさえできなかった。熊田颯馬外野手(3年)らには、謝罪のメッセージが届いた。熊田は「気にするな!」と返信したという。

「最後に三塁打があって、『みんなが笑顔で終われたよ』と、出られなかったメンバーには伝えたい。公立高校の可能性を示すことはできたと思います。この点差になって申し訳ない気持ちと、ここまで来ることができたのは、みんなのおかげという思い。ありがとうと伝えたい」

生駒のメンバーたちが球場を出る際には、観客は花道を作った。

公立高校が演じた快進撃は、甲子園まであと1歩でついえた。大きな拍手を浴びる。保護者と対面すると、彼らは泣きじゃくった。