カナノウ旋風を巻き起こした兄と同じ道を歩む。日本ハム吉田輝星投手(22)の弟で天王中(秋田)の大輝投手(3年)が15日、金足農(秋田)に合格した。177センチ、82キロと中学生離れした体格を誇り、最速は132キロ。同校の絶対的なエースとして18年夏の甲子園で準優勝に導いた兄のように名門で輝きを放つ。

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大輝は、兄輝星の代名詞だった金足農の背番号「1」を受け継いで、全国制覇を果たす青写真を描いている。天王中では軟式野球部に所属する傍ら硬式野球チームのネオ・グリッターズでも3年間プレー。中学卒業後の進路は一択だった。「兄さんが金足農業で甲子園準優勝という結果を残し、今度は自分が兄さんの分まで優勝するために、金足農業で野球をしたいと思いました」。多くの野球仲間を誘って同校を受験し、見事合格を決めた。

1年夏からベンチ入りした兄のように、大輝も早期での公式戦出場を目指す。「1年生なので思い切ってプレーし、できるだけ早くレギュラーを取りたいです」。177センチ、82キロのがっちりした体格で、プロ5年目を迎えた175センチ、83キロの兄とほぼ変わらない。大型ルーキーとして日々の練習からアピールする。

大輝の投球フォームは輝星をほうふつさせる。映像を見て下半身の使い方を参考にしており、伸びのある直球にカーブ、スライダー、スプリットを織り交ぜ、テンポのいい投球で打者を封じていく。「自分は投げているときは、けっこうオラオラ感があるんですけど、そういう強気なところは負けないと思います」。ひるまずに向かっていく気持ちの強さも魅力だ。

最速は、中学1年が112キロ、2年が122キロ、3年で132キロと10キロずつ伸ばしてきた。チームメートをおんぶしながらダッシュを繰り返し、冬の間は雪上で走り込むなど、ランメニューに力を入れて足腰を鍛え、球速アップにつなげた。「兄さんが(高校3年の)国体で152キロを出しているので、それを超えて155キロとかを最終的に出したいです」。大台に乗せるだけでは満足しない。

大輝は「一番近いようで遠い存在」という兄の背中を追ってきた。「自分は兄さんがけっこう好きなので、同じスポーツをやろう」と、小学1年の冬から野球を始め、家の前で一緒にキャッチボールをするのが楽しみだった。金足農が快進撃を見せた18年夏の甲子園は、決勝までの全試合を現地観戦。「兄さんはすごい存在だな」と憧れを一段と強くし、同じステージに立つことを誓った。

同じ投手として、かなえたい夢がある。それは“輝星超え”だ。「自分が一番実現したいのは、プロ野球選手になり、1軍で兄さんと投げ合って勝つことです」。大きな野望を胸に秘め、金足農で飛躍を期す。【山田愛斗】

◆吉田大輝(よしだ・たいき)2007年(平19)4月23日生まれ、秋田県潟上市出身。小学1年冬に天王ヴィクトリーズで野球を始め、天王中では軟式野球部に所属する傍らネオ・グリッターズでもプレー。憧れの選手は吉田輝星、大谷翔平。家族は両親と兄。177センチ、82キロ。右投げ右打ち。血液型A。

○…金足農OBの父正樹さは、ネオ・グリッターズの投手コーチとして大輝の成長を見守ってきた。「中学3年間で全体的に順調に伸びてきた印象です」と評価。その上で「投球のリズムは悪くなく、ポンポン投げていける。周りを見る余裕もあり、守備側からすると守りやすいピッチャーだと思います」と語った。