当たり前ではないと知った“いつもの景色”が、やっと戻ってきた。第95回選抜高校野球が18日、開幕した。天候不良のため、予定よりも1時間半遅れて始まった開会式は、センバツでは19年春以来4年ぶりとなる、全選手がそろって場内1周する入場行進。アルプススタンドにも、声援が戻った。

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戻ってきた“当たり前の光景”に胸が熱くなった。場内を一周して大きな拍手を浴びた選手が、外野から内野へ一斉に行進する様子は壮観。日本高野連の宝馨会長(66)は「36校全員が入場行進をしてくれました。コロナ禍以前のような形で開会式ができることを大変うれしく思います」と話した。

甲子園には、にぎやかなアルプススタンドがよく似合う。2年連続出場の高知のアルプスは1200人を超えた。最前列で応援したのは、前チーム主将の谷崎陽(あき)さんら野球部OBだ。昨年のセンバツ初戦は東洋大姫路(兵庫)に4-2で勝利。しかしアルプス席は学校関係者のみで、ブラスバンドは50人以内の制限付き。もちろん、声出しはなかった。「去年も(プレーして)楽しかったんです。でも声があるのとないのでは、こんなに違うんだなって思いました」。

応援団の両手には、高知のお祭りよさこい踊りで使う鳴子。2、6回に「高知の城下へ来てみいや~」と歌いながら踊りを披露した。吹奏楽部の人数が少ないため、四條畷(大阪)のマーチングバンド部76人が友情応援。「打て打て! 高知!」と声をそろえた。ベンチ入りの選手もマスクを外し、捕手の高木は「みんな声を出して頑張ってくれていたので、負けないくらい声を出していこうと思いました」と感謝した。

山梨学院のアルプス席は、昨年の1・3倍以上となる750人が集まった。在校生の観戦希望者も増え、350人が駆けつけた。チャンステーマ「BIG WAVE」が流れると、一気に盛り上がる。2年続けてスタンドからチームを後押しした中沢漣投手(3年)は「声があることでスタンドが1つになって、一体感があると思いました」。グラウンドの選手たちに、エールは届いた。佐仲は「3回目の甲子園で、初めて(声を)聞いたのでうれしかった。声出しがあった方が気持ちが乗ってくる」。みんなが待っていた熱気。甲子園から“コロナ明け”の訪れを告げた。【保坂恭子】

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