<高校野球・秋季宮城大会中部地区予選>◇8日◇宮城・広瀬球場

 今夏甲子園16強の東北が有望スラッガーの活躍で、新チーム公式戦初勝利を挙げた。延長10回、6-5で聖和学園に勝利。3番の上村健人一塁手(1年)が、高校初アーチを含む2安打2打点の活躍で打線をけん引した。ダルビッシュ(日本ハム)の勇姿にあこがれて越県入学した上村を筆頭に、新星たちが一丸となった「ニュー東北」がスタートを切った。

 大きな放物線が描かれる。白球が右翼席ではねると、ベンチから拍手と歓声が起こった。6回、上村が公式戦2戦目にして、練習試合も含めて高校第1号を放った。「後ろにつなぐことだけを意識してました」。無表情でダイヤモンドを駆け抜けた記念の一撃を、謙虚に振り返った。

 1-2の8回2死三塁では右越え三塁打で同点にすると、今度はベンチに向かって笑顔で拳を突き上げた。3点を追う9回、打線は3連打で1点差に詰め寄り、なおも2死一、三塁。上村が打席に立つと相手投手がボークを犯し、またも試合は振り出しに戻った。183センチ、90キロの巨漢は強運も味方にした。

 ヤンキース松井にあこがれ小学生時代に、右から左打ちに転向した。そんな上村が次にあこがれを抱いたのが、03年夏の甲子園でダルビッシュを擁して準優勝した東北だ。05年夏の甲子園では、その東北の準々決勝を観戦。大阪桐蔭の平田(中日)に3被弾して敗れた戦いに「自分が強打者になって東北を強くしたい」と、神奈川の実家を離れて入学を決意。今夏の県大会では、1年生で唯一、ベンチ入りを果たした。

 2勝を挙げた今夏甲子園ではメンバー全員が3年生だったこともあり、新チームは大半が“新戦力”。6日の仙台育英戦は2-9で完敗したが、粘りを発揮したこの日の勝利に我妻敏監督(27)も「最後まで食らい付いたのは次に生きる」と評価した。「ここに来た以上、目標は全国制覇です」と上村。「東北のゴジラ」を目指すスーパー1年生を中心に、県大会(19日開幕)で「新生東北」の戦いに注目だ。【由本裕貴】