<国体高校野球:都城商3-2花巻東>◇29日◇準決勝◇ハードオフ新潟

 日米注目の155キロ左腕、花巻東(岩手)の菊池雄星投手(3年)の高校野球生活が終わった。都城商(宮崎)戦には登板せず、1点を追う9回2死に代打で登場して遊直に倒れた。いよいよメジャー挑戦か、プロ野球入りかの話し合いに入る。周囲も勧める国内を基本にして、佐々木洋監督(34)や家族に相談しながら決断を下す。

 最後はマウンドではなかった。それでもフィナーレは、やはりこの男だった。9回2死二塁、菊池が打席に向かうと、球場は大きな拍手に包まれた。初球を振り抜いた。快音を残した打球は、ライナーで遊撃手のグラブに収まった。それを見ても、菊池は走るのをやめなかった。一塁ベースを駆け抜け、高校野球生活の最後の瞬間まで全力プレーを貫いた。

 「最高の仲間とともに、ここまで来れた。すがすがしいというか、スッキリした気持ちです」。センバツで準優勝に輝き、夏の選手権でも4強入り。国体でも頂点は遠かったが、間違いなく、この1年の高校野球界の主役だった。

 リリーフ登板した28日の中京大中京(愛知)戦では150キロ超を連発。詰め掛けた日米20球団のスカウトを感嘆させた。この日の試合後、菊池は進路について「国体のことに集中していて何も考えていませんでした。帰って両親と相談して、決めたいと思います」と話した。

 流石裕之部長によると、プロ志望届の提出は学校行事の都合などもあり、1週間後くらいになるという。提出後、獲得を目指すプロ球団からの話を聞くことになる。将来の夢に掲げるメジャー球団からも話を聞くことになるが、佐々木監督が「日本をメーンにしてメジャーも聞くということになると思う」と話しているように、国内を基本路線に自らの道を決断することになりそうだ。家族やチームメートは本人の意思を尊重しているが、やはり「近いところにいてほしい」と周囲は国内での活躍を希望している。

 菊池は30日に岩手に戻る。「明日からすぐに切り替えて練習する。これからが大事。これからいろんなユニホームを着るかもしれないけど、人の心を動かせるような愛される選手になりたい」。次の世界に向け、気持ちも新たに自主練習をスタートする。【由本裕貴】