<高校野球北北海道大会:稚内大谷5-1浜頓別>◇26日◇代表決定戦◇名寄地区予選

 名寄地区で、稚内大谷が北北海道大会(7月16日開幕、旭川スタルヒン)進出を決めた。稚内大谷は165センチの大黒柱、広川直紀投手(3年)が代表決定戦で浜頓別を4安打1失点に抑え、16三振を奪う力投を披露した。前日25日の稚内商工戦で5回参考ながら無安打無得点試合を達成した右腕が、チームに2年連続の代表権、北大会通算100勝目を導いた。

 165センチ、66キロと小柄な稚内大谷の広川が連日の快投劇を披露した。本来の調子になかったという浜頓別との代表決定戦。8回までわずか1安打、9回に1点を献上したが、悠々と勝利をものにした。自己最多となる毎回の奪三振16。前日の稚内商工戦では5回参考ながら無安打無得点試合を達成したが、連投の疲れを見せなかった。

 「(9回は)打者の裏をかこうとスライダーを多く使ったら狙われました。でも失点より、チームの勝ちが大事」。主将で4番打者の右腕エースは少し紅潮した顔で振り返った。試合前、越後屋亨監督(33)に仲間とともに「先輩たちが積み重ねてきた重みを感じてほしい」と送り出されたが、夏の通算100勝をしっかり導いた。

 意識が変わった。今春は地区3試合を無失点で、浜頓別戦で8回参考ながら無安打無得点を達成。だが、自信を持って臨んだ全道1回戦で北海道栄に0-14の大敗。「焦ってしまった」と、1人では勝てないことに気づいた。この日も自分から周囲に声をかけ、意識して仲間の顔を見るようにした。

 天塩町で乳牛80頭を飼育する酪農業の家庭で育った。越後屋監督は「ブルドーザーみたいなやつで、バネがある」と話すように、天性の体の強靱(きょうじん)さを持つ。筋力が強く、1年秋に全力疾走し、限界を超えた力に骨盤が剥離骨折した。約3カ月のリタイアを余儀なくされた。今ではケガをしないために毎日、四股を踏むなど柔軟性を高めている。

 「最北からの甲子園」が、毎年のテーマだ。北大会決勝に3度挑戦し、すべて1点差のサヨナラ負けを喫した不運な歴史もある。2年連続の北大会に向け、広川は「落ち着いてチーム全体で守って、打っていきたい」と力を込めた。夢の扉を開ける舞台は16日に始まる。【中尾猛】