<北海道高校野球早慶招待試合:北海2-2慶応>◇16日◇初日◇札幌円山

 春の北海道大会を制した北海が慶応(神奈川)と対戦。互角の戦いを繰り広げ、2年連続の夏甲子園へ弾みをつけた。1953年(昭28)夏の甲子園以来59年ぶりの再戦で、エース玉熊将一(3年)が慶応打線から13三振を奪う快投を披露。5回に3連打、9回にソロ本塁打で1点ずつを失ったが、4安打無四死球の完投で好仕上がりをアピールした。

 北海の玉熊が、これ以上ない相手に納得の投球を見せた。9回表にソロ本塁打を浴び、2-2の引き分けに持ち込まれたが、試合後の表情は明るかった。「直球も変化球も良くて、いつもよりいいボールを投げられました。慶応はいい打者ばかりで、考える野球ができました」と充実感にあふれた。4回までパーフェクト。直球、スライダーが切れ、左打者からはチェンジアップで三振を奪った。6回から8回も許した走者は失策の1人だけ。13奪三振で無四死球と、安定感は今年一番だった。

 慶応は神奈川で夏の甲子園最多17度出場を誇る古豪。春は県4回戦で優勝した横浜隼人に延長13回4-5でサヨナラ負けしたが、ベスト16で夏は第3シードに名を連ねる。「打席で立つ位置を変えたり、狙い球を変えたりといろいろ工夫してきました」。玉熊は一筋縄ではいかない相手打線の底力を感じ取っていた。

 ケガから復帰したばかりの平田成捕手(3年)と呼吸を合わせ、しのいだ。マウンドやベンチで入念に打ち合わせした。1点リードの終盤には、公式戦でもあまり見せない気迫の声をマウンドで振り絞った。土壇場の1発で勝利を逃したが「内角の厳しい球」と笑って相手打者をたたえた。

 試合後は両校監督、代表3選手による交流の場が設けられた。慶応の主将、木村健人捕手(3年)は「玉熊投手は中学生のころから知っていて、対戦が楽しみでした。負けなくてよかった」と振り返った。玉熊は「(慶応から)吸収できるものを吸収しようと臨みました」と投じた124球から夏への手応えをつかんだ。最後に北海・平川敦監督(41)が「いろいろ教わることが多かった。今夏、大阪で、甲子園で会いたいですね」と呼び掛けると、隣に座っていた玉熊も笑ってうなずいた。【中尾猛】