【ソウル(韓国)28日=今井恵太、鎌田良美】高校通算56発の長距離砲としての顔も持つ花巻東(岩手)大谷翔平投手(3年)が、初の海外遠征に“秘密兵器”を持ち込んだ。第25回IBAF18U世界野球選手権(30日~9月8日)に参加する高校日本代表が現地入り。最速160キロをマークする投手だけでなく、打者としても期待される大谷は、重心の位置が異なる2タイプの木製バットを持参した。

 重心が先端にあり、長距離打者向きで操作が難しいと言われるトップバランス1本に加え、重心が広くて比較的扱いやすいミドルバランスを2本。今夏の岩手大会ではトップバランスを使っていたが、木製バットに対応するために新たな相棒を入手した。「自分は長打が持ち味。それを生かしたい」。3本とも、岩手大会で使っていた84センチより1センチ長い。「チームでは84センチが一番長かったけど、それ以上を使いたいと思っていた」。遠心力が増し、飛距離はさらに伸びるはずだ。

 合宿での練習試合では、大学生相手に2試合で6安打を放ち、プロスカウトから「3冠王を取れる可能性がある」との声も上がったほど打者としての評価も高い。大谷は「ピッチングの方が好き」と投手志向が強いが、今大会に向けては「バッティングを多めにやってきた」と、木製バットへの順応を優先してきた。小倉全由監督(55=東京・日大三)も投手として登板時は5番、指名打者の際は4番で起用する構想を持っている。

 初戦のチェコ戦が行われる蚕室総合運動場野球場は、両翼100メートル、中堅125メートルと広い。本塁打が出にくい球場だが、大谷は「(スタンドに)入れられたら入れたい」。規格外のアーチへの期待も膨らむ。【今井恵太】

 ◆大谷の打撃

 センバツ1回戦では藤浪(大阪桐蔭)の内角スライダーを、逆風の中を軽々と右中間へ先制本塁打。春の花巻地区予選では遠野緑峰戦で場外弾2本。春の岩手県大会では相手三塁手が外野を守る外野4人守備も見られた。今夏の県大会では3番を打ち、初戦の宮古水産戦で高校通算56本目の本塁打を放つなど、大会6試合で18打数9安打、1本塁打、7打点。

 ◆蚕室(チャムシル)球場

 ソウル中心部から10キロほど離れた総合運動公園内にある天然芝の野外球場。プロではLG、斗山の2球団が本拠地で使用。本塁打が出にくいことで知られ、両翼100メートル、特に中堅の125メートルが広い(日本プロ野球の使用球場では中堅122メートルが最長)。フェンスの高さ2・75メートル。収容人員3万500人。82年開場。韓国を代表する球場で88年ソウル五輪、99年シドニー五輪アジア地区予選などで国際大会の舞台になった。