<高校野球IBAF18U世界選手権:日本5-6カナダ>◇31日◇予選第1ラウンド◇韓国・木洞

 【ソウル=今井恵太、鎌田良美】日本が誇る才能豊かな160キロ右腕に、メジャーも熱視線!

 高校日本代表が、初戦のカナダ戦で延長10回タイブレークの末にサヨナラ負けした。先発した花巻東(岩手)・大谷翔平(3年)は3回1/3を3安打5四死球3失点、4番に入った打撃では3打数1安打2打点。本調子ではなかったが、視察した大リーグ8球団のスカウトは潜在能力を高く評価。レイズの関係者は、マリナーズのサイ・ヤング賞右腕ヘルナンデスを引き合いに出し、獲得を希望するほどだった。

 大谷の海外デビューは、ほろ苦いものとなった。国際大会にありがちなストライクゾーンの相違があった。高めには厳しく、外角には甘いと判断し、得意のカーブは封印してカットボール中心で攻めたが、制球に苦しんだ。「自分が思うようなところに投げられなかった」。2四死球で招いた4回1死一、二塁のピンチ。前打者から続けた7球目の真っすぐを8番スピウォクに捉えられて同点。9番ホッジスには、甘く入ったスライダーを右前に運ばれ、勝ち越された。

 予想外の事態にも見舞われた。投球プレートの前部が土ではなくゴム。「ゴムでひっかかって軸足(右足)が回らなかった。土しかやったことがなかったので」。そんな中、岩手大会決勝から1カ月以上たった公式戦で最速は153キロをマーク。打っても4番に座り、1回には犠飛、7回には左前に適時打を放った。

 その潜在能力の高さに、ネット裏のスカウト陣も色めき立った。世界大会とあって阪神のほか、メジャーからは8球団が集結。レイズのアイルランド環太平洋担当スカウト(元広島)は「今日は球がバラついていたけど、すごいポテンシャルだね。打撃も良い」と食い入るように見つめた。さらに、8月に自軍相手に完全試合を達成したマリナーズのヘルナンデスを引き合いに「とても似ているよ。ファストボールと良いスライダーに、あの投球モーション。すごいポテンシャルだ」と絶賛し、日本語で「ほしい」と付け加えた。

 大谷は「気付かなかった。自分の力を出し切りたい」と、メジャーからの熱視線は意に介さなかった。「このままじゃ終われない。全力でやっていきたい」。「金の卵」を探しに来たスカウト陣たちも、フルスロットルの大谷を待っている。【今井恵太】

 ◆高校生とプロの交渉

 高校生は所属する都道府県高野連に「プロ志望届」を提出した翌日から、プロ球団の話を聞くことが可能になる。大リーグ球団も同様。09年の花巻東・菊池雄星(現西武)は日米20球団と面接した。日本のドラフトに指名された後、大リーグ入りを希望した場合、翌年の3月31日まで指名球団に「選手契約締結交渉権」があり、契約は4月1日以降になる見込み。期間中に外国チームと契約を交わすことは、現在のルールでは想定されていない。日本のドラフトで指名がなかった選手では、97年に天理・川畑健一郎外野手がレッドソックス、大曲工・後松重栄投手がメッツ、09年に日生学園三・山林芳則投手がブレーブス、10年に文徳・高野一哉投手がドジャースと契約した例などがある。