<秋季高校野球福島大会:光南4-1小高工>◇17日◇2回戦◇いわきグリーンスタジアム

 球速45キロの遅球を操る光南の右腕・八木沢天成投手(2年)が4安打13奪三振で公式戦初完投。小高工を破った。直球と89キロの差をつけ、相手打線を手玉に取った。

 勝負球は、何と大きな山なりだった。2回、八木沢が「最も警戒していたので、投げようと決めていた」という4番・鈴木康平一塁手(2年)への初球。高校入学直後に「最初は遊びで投げていた」という、カーブの握りから繰り出す超スローボールで空振りを奪った。最後は133キロの直球で三振。7回にも鈴木康に、この日最も遅い45キロのボールを織り交ぜて3打席連続三振に仕留めた。自己最多13Kに加え、無四球での完投に「今までで最高のピッチング」と満面の笑みを見せた。

 1カ月前までは、どん底だった。8月上旬の練習試合で北越(新潟)相手に、制球が定まらず8回17失点。「ヒットも四球も2ケタ。忘れられない」と振り返る。その後はフォームを全て改造し、直球と同じ腕の振りでスローボールを投げる練習を繰り返した。この日、直球の最速は134キロ。89キロの球速差で相手打線を手玉に取った。菅波智之監督(42)も「今後の可能性を感じた」と、背番号10のエース候補をたたえた。

 先輩に志願するほどのこだわりがある。夏まで正捕手だった武地雅仁(3年)は「サインを出してください、と頼まれた」という。緩急をつけて抑えるスタイルを象徴するボールを、この日は「4番を抑えるため」(八木沢)に普段より多く4球投げた。東北大会出場権と背番号1を取るために、遅球にさらに磨きをかける。【鹿野雄太】

 ◆八木沢天成(やぎさわ・てんせい)1995年(平7)4月28日、福島・西郷村生まれ。小4時に小田倉スポーツ少年団でソフトボールを始める。西郷二中で軟式野球部に所属。ポジションは主に遊撃手。高校入学直後に志願して投手に転向。同年秋に初のベンチ入り。家族は父、母、姉2人、兄。右投げ右打ち。177センチ、60キロ。血液型A。